本稿は、日中首脳会談前に書いているが、ASEAN首脳会合から始まった一連の高市外交で感じたのは、高市氏が、イタリアの首相、ジョルジャ・メローニ氏(48)に似ていることだ。
メローニ氏は、ムッソリーニ精神を受け継ぐネオファシスト系の組織を皮切りに政治の道に入った女性で、2022年、下院選挙で右翼政党「イタリアの同胞(FDI)」を率いて勝利し首相の座に就いた人物である。
しかし、就任するや「極右」のイメージとは異なり、EU諸国と緊密に連携する協調路線を打ち出し、G7諸国の中でイタリアだけが加わっていた中国の巨大経済圏構想「一帯一路」からの離脱まで宣言した。
トランプ氏に対しては、トランプ氏の語調をまねて「西洋を再び偉大にする」と述べ、「偉大な指導者で友人」と一目置かれる存在にまでなった。
メローニ氏の根幹にあるのは、イタリア経済復活のため実利を取る外交姿勢である。それは、東南アジア諸国、日米、日韓と続いた首脳会談で、常に笑顔で友好的な雰囲気を醸し出し、「まず人間関係を構築する」という実利を狙った高市氏と重なる。
高市氏は、「サッチャー・ブルー」と呼ばれる青系のスーツを勝負服として多用し、「和製サッチャー」を目指していることで知られるが、協調と主張を織り交ぜる外交姿勢は「和製メローニ」そのものだ。
ただ、各国との関係をどう深化させていくかはこれからだ。また、メローニ氏のように国内問題で堅実な政権運営、なかでも財政運営ができるかと言えば未知数で、前途には大きな壁が立ちはだかっていると言わざるを得ない。
「ゴジラが来た…」
戦々恐々の財務省職員たち
高市内閣の顔ぶれが明らかになり、旧大蔵省出身の片山さつき氏(66)が財務相に起用された10月21日の夜、筆者に1通のメールが届いた。
送信者は財務省の職員。長文のメールを抜粋すると以下のようになる。
「うち(財務省)の主計局あたりじゃあ、今頃、ゴジラが来たかのような驚きが拡がっているよ。自民党が国民民主党と連立して、玉木雄一郎財務相(56)の誕生を恐れていたのに、もっとやばい。主計官を経験してきた片山さんは財務省の手の内を知り尽くしている」







