ガソリン税の暫定税率廃止だけでも1.5兆円の税収減になる。「103万円の壁」を178万円まで引き上げれば8兆円近い減収が予想され、「高校授業料無償化」も6000億円以上の支出増になる。財務省的にはやめてほしいものばかりである。

 さらに、自民党と日本維新の会とで合意した「大阪副首都構想」を実現させようとすれば、4兆~8兆円も支出が増えることになる。

 トランプ氏と約束した防衛費増額に関しても、GDP比2%(10兆円規模)に増額するとすれば2兆円以上は必要で、今度は野党が黙っていない。

 すでに議論が始まっている「金融所得課税」(投資信託、株式、預金などの金融商品から得た所得にかかる税金)の引き上げをはじめ、固定資産税の見直しなど、財源確保のための財務省の巻き返しは避けられそうにない。

麻生氏が目指すのは
「1月解散で自民党単独政権」

 こうした中、自民党内では、「高市内閣の支持率が60~70%と高い間に衆議院を解散すべき」との声が上がり始めた。

「麻生氏の狙いは、公明党を斬って自民党単独政権を復活させること。解散の時期?維新がどこまで抵抗するかだけど、あるとすれば、来年1月の通常国会前かな」(前述の旧安倍派衆議院議員)

 といった声もあるが、そうなれば、物価高対策がおざなりになる。政治もさらに不安定し、高市内閣も短命で終わるリスクが生じる。

 高市氏の著書『美しく、強く、成長する国へ。私の「日本経済強靱化計画」』(ワック)には、「国家経営のトップが明確な国家経営理念と強い信念を持ってリーダーシップを発揮し、産学官が連携して本気で取り組めば、克服できることばかり」というフレーズが出てくる。

 その言葉どおり、高市氏には、財務省による画策や自民党内からの圧力に負けない、揺るぎのない理念と信念で、「働いて働いて働く」首相であり続けてほしいと願っている。

(政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授 清水克彦)