「忙しいせいで学べていない」という思い込み

 また、『学びをやめない生き方入門』は、小手先のテクニックにも重きを置いていません。

 働く大人が「学べない状態」に陥っているのは、なんらかの技術(いわゆる勉強法)が不足しているせいではないからです。

 おそらく、本当のつまずきは、それよりもっと「手前」にあるはずです。そこにアプローチしないまま「学びのテクニック論」に終始していても、「学べない現状」は何も変わりません。

 そして、大規模データを分析した結果で見えてきたのが、学びをめぐる「7つのバイアス」でした。学べている人と学べていない人のデータを比較すると、この「バイアスの強さ」に顕著な違いが見られたのです。

 きっと、「自分が学べないのは、時間が足りないせいだ」と思っている人は、たくさんいるでしょう(少なくとも、私自身はそうでした)。それ以外にも、「意欲がないから」「頭が悪いから」「環境がよくないから」など、いろいろな理由をあげる人がいると思います。

 しかし、それ以前になんらかの「学びのバイアス」が働いているのだとしたら……?
「無意識の思い込み」のせいで、うまく学べなくなっているとしたら……?

 そのバイアスから逃れるのは、決してそんなに難しくありません。「自分のなかにどんな思い込みが眠っているのか」に気づくだけでも、大きな収穫です。

 なぜなら、バイアスというものの厄介さは、「無意識」であることにあるからです。自分の思い込みを「意識化」できた時点で、じつは「いちばん大変な一歩」は踏み出せているとも言えます(それに気づくための「学びバイアス診断テスト」も『学びをやめない生き方入門』の本文中に掲載されています)。