「学べていない自分」がイヤで仕方なかった

 私は長年、書籍編集の仕事をしてきましたが、40代に入ったあたりから、自身の「学びのサイクル」がうまく回っていないと感じるようになりました。

 自分で言うのもなんですが、以前は次々と新しい分野の本を読んだり、さまざまなエンタメに触れたりといったことが、わりと自然にできていたように思います。

 ところが、会社で昇進して、求められる役割が変化したり、2人目・3人目の子どもが生まれたりしたあたりから、「あれっ?」と感じることが増えました。 

「自分自身が“更新”されていない感覚」と言えばいいのでしょうか。

 そして、いまから2年前、私はそれまで勤めていた会社を辞めて、自ら「テオリア」という出版社を立ち上げました。

「なぜそんな無謀なことを?」といろんな人に理由を尋ねられるのですが、突き詰めれば「もう一度、ちゃんと学びたい!」という想いがあったのだと思います。

 会社員として日々忙しく働き、たしかに成果は出している。けれども、そのなかで「自分は新たに何かを学んでいる」と胸を張って言えない感じがありました。それがずっと気にかかっていたのです。

 決して、会社がイヤだったわけではないし、むしろ、とても恵まれた環境にあったと思います。ですが、会社を辞めるしかないくらい、「学べていない自分」が耐えがたかったのです。

『学びをやめない生き方入門』のなかには「学んでいる大人のほうが『幸せ』を感じている」というデータが登場します。

 裏を返せば、「学びが停滞している状況」というのは、多くの人にとって「不幸」として認知されるのかもしれません。