一方、原油については、いまのところ、アメリカ国内の原油需要が減少しているのを背景に、WTI原油価格のみが世界の他地域に比べて安い状況にあります。ですが、やがては欧州の北海ブレントや中東産ドバイ、さらにはロシア産の原油価格にも大きな下落圧力が働いていくはずです。
原油にしても天然ガスにしても、アメリカの指標価格を後追いするように全体の価格が下がっていくのが、経済的合理性からいっても自然な流れではないでしょうか。原油価格などは2017年までに50ドルを割り込んでもおかしくないのです。
大ダメージを受ける資源国
アメリカではシェールガスとともに、シェールガスの採掘方法を使ったシェールオイルの開発も急増しています。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、アメリカは2015年までには世界一のガス産出国に、2017年までには世界一の産油国になるとの見通しを立てています。
こうしたエネルギー情勢の劇的な変化は、アメリカの安全保障政策をも大きく変えようとしています。
アメリカは世界最大の石油消費国で、最も多いときには国内の原油消費量の60%を主に中東産油国からの輸入に頼ってきました。ですが、2011年の輸入比率は45%、2012年では42%と漸減傾向にあります。2013年以降は輸入比率がさらに下がっていくことは間違いありません。
やがては世界一の産油国になって、中東産油国から原油を買う必要がなくなれば、アメリカにとっては、もはや自国の軍事力をエネルギー確保のために中東地域へ集中させる理由もありません。