中国を考えるとき、もっと大事な点は、中国自身が抱える国内リスクのほうでしょう。格差拡大と民主化の動き、共産党独裁の問題、軍の暴走、チベットなどの内政問題は、経済問題以上の大波乱を引き起こすかもしれません。革命や内乱といった巨大リスクが隠されている点には注意しなければいけません。

BRICs諸国は低成長の普通の国になる

 これらの新興国には環境汚染という大きな問題が残っています。新興国全体がいまや深刻な環境汚染に苦しんでいるのです。経済成長だけが優先されて、国民の健康は犠牲にされてきました。新興国に進出している海外企業にとって、環境コストが高くつくのはこれからでしょう。

 その上、新興国は課税強化の動きを強めています。これまでは外資を呼び込むために企業への課税を押さえてきましたが、工場誘致等が一巡したこともあって、外資系企業にさまざまな形で課税することを図っています。なかには国際的な二重課税問題にまで発展しているケースも出ているほどです。課税強化が進むことで、これまでのようには外資を呼び込めなくなるでしょう。

 これらの点を考えると、BRICs諸国はもはや高成長の国々ではなくなっているのです。実際、経済成長率も低下傾向にあります。高成長の国から低成長の普通の国になっていくのです。中国はいまだ7%超の成長率といっていますが、実質的には5%くらいがいいところです。ヘタをしたら、それも切っているかもしれません。

 では、これからの高成長諸国はといえば、それは東南アジアの国々です。フィリピン、インドネシア、タイなどでは中間層の所得が増えており、かつての日本のように、家電製品や自動車の購入など、消費意欲の高まりが経済を牽引しています。BRICs諸国の成長に陰りが見えるなか、新たな新興国としてASEAN諸国が注目を集めていくことになるでしょう。


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