「旧安倍派の自民党議員とか“安倍応援団”だった人たちは協力してくれないんですか? あんなに安倍さんに世話になって、引き立てられた人もたくさんいるんだから、安倍さんの名誉回復のためにも恩返ししようという人はいないんですか?」
私は「安倍側近」と言われていた政治家の名前を何人か挙げてみたが、佐藤宮司は力なく首を振って苦笑いするだけだった。
「保守でいえば、西村慎吾さんや石平さん(日本維新の会・参議院議員)は応援してくれていますが、自民党議員というとやはりなかなかねえ…」
この話を聞いて、安倍元首相が気の毒になった。確かに政治家は選挙に落ちればただの「無職」になるので、世間的に悪いイメージがついた人とは縁を切る、というのが鉄則だ。
マスコミで朝から晩まで「旧統一教会とズブズブ」と報じられ、“死人に口無し”なことをいいことにジャーナリストらに「デマ」のような適当な話を公共電波で語られている安倍元首相と関わったところで、「百害あって一利なし」ということで、かつて「側近」と呼ばれた人々や、チルドレンたちから縁切りされてしまったのだろう。
“国を守る”とか勇ましいことを言いながら、我が身かわいさで“保守の同志”の名誉を守ることさえできないじゃないか――。そんな感じで自民党保守に軽い失望を感じていたところ、佐藤宮司が思い出したように言った。
「ああ、でも高市さんがいました。ちゃんと支援をしていただきましたし、銅像が建ったらちゃんとお参りに行きます、と電報もいただきましたよ」
実際、安倍晋三元総理銅像建立プロジェクトで入金した「支援者」の一覧を見てみると、ちゃんと「高市早苗様」と掲載されていた。そこに加えて、7月の参院選で落選してしまった杉田水脈氏からも同じような返事があったという。
この話を聞いてから、私は高市氏の「人柄」が好きになった。
自民党で「保守」を名乗っている人の多くが、「安倍晋三首相の銅像をつくろう」というリベラルの格好の餌食になりそうな「リスク」には一切近づかないなかで、「安倍氏の後継者」を掲げてきた自分自身の筋を通す姿に、シンプルに好感を抱いた。
「日本人ファースト」のように保守にアピールできる派手な話ではないので、高市氏にはなんの「得」もない。むしろ、リベラルや党内の反安倍勢力からディスられる材料を増やすだけだ。そういう「損」しかない話にも高市氏は協力を申し出た。「政治の師」と仰ぐ安倍氏の銅像だからだ。
政策や政治信条の全てを支持できるわけがないが、「自己保身」や「駆け引き」ということをあまり考えない、素直な人なのではないか。私が高市氏に好感を抱いたのは、それが理由だ。







