ここではサービス向上の観点を中心に語られていたが今回、これら次世代改札の導入で、駅の完全チケットレス、キャッシュレスを今後10年以内に実現し、オペレーションコストを100億~150億円程度削減するとの方向性が示された。また、出改札機器の削減などで生み出したスペースを有効活用して増収につなげたいとしている。

 同社は2026年度末以降、磁気乗車券をQRコード乗車券に置き換えると発表しているが、果たして10年以内に完全チケットレスが実現するのか。どのようなロードマップを描いているのか、改めて担当者に取材を申し込み、深掘りしたいと思う。

増収効果は運賃改定分だけ?
「固め」想定だが成長の余地も

 増収面では、2026年3月14日の実施を予定している運賃改定が中心となる。改定により年間820億円の増収効果を見込んでおり、これは2025年度業績予想と、グループ経営ビジョン「勇翔2034」で掲げた2027年度数値目標の差に等しい。

 これは改定分以外の増収に期待しないことを意味するが、実際には「固め」の想定と見たほうがいいだろう。9月に発表したモビリティ中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」では、2031年度に営業収益を2024年度比で2000億円以上の増加を目指すとしており、羽田空港アクセス線など中期的な取り組みにより成長を目指していく。

 運賃・料金についてはさらなる柔軟化を目指し、他社とも連携しつつ、引き続き国へ要望していく意向だ。現在、運賃は認可制、在来線特急料金は届出制だが、新幹線については特急料金が必須なため、自由席特急料金を運賃の一部とみなし認可制としている。これを届出制にし、行政の審議・判断を経ることなく変更可能にしたいとの内容だ。

 また、現行の総括原価方式では、鉄道事業が「赤字」にならない限り、運賃値上げが認められない。つまり、収支が悪化しても利益を食いつぶすまでは対応できない仕組みであり、必要な投資が遅れる懸念がある。インフレ傾向が本格化する中、柔軟に対応できる仕組みの導入を要望している。