Photo by Yoshihisa Wada
「プライシングの神様」と呼ばれる創業者ハーマン・サイモンの思想を基盤とするドイツの戦略コンサルティングファーム、サイモン・クチャー。現在30カ国以上で2000人が在籍する同社で、2025年1月に共同最高経営責任者(CEO)に就任したヨルグ・クルエッテン氏が、日本メディアのインタビューに初めて応じた。連載『コンサル大解剖』の本稿では、「成長のスペシャリスト」として独自のポジションを築く同社の強み、そして日本企業の最大の課題と捉える「プライシング」の処方箋についてクルエッテン氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
リストラや業務効率化は行わない
トップライン成長の「専門家集団」
――ボストン・コンサルティング・グループやマッキンゼーといったグローバルの大手戦略コンサルティングファームと比較し、サイモン・クチャーの強みはどこにあるのでしょうか。
私たちは自らを「スペシャリスト」と位置付けています。特に企業の持続可能な利益ある成長をドライブすることに特化していることが、他のコンサルとの大きな違いでしょう。
もともと弊社はプライシング(価格戦略)のコンサルティングから始め、今日ではポートフォリオ戦略や市場・競合戦略など、成長に関わる領域を幅広くカバーしています。業界と専門分野の知見を深く組み合わせたサービスを提供している点が、私たちの強みといえます。
私たちはスペシャリストですので、他のメガファームが手掛けるようなリストラクチャリング(事業再編)やオペレーショナル・エクセレンス(業務効率化)の領域は行わない。戦略、マーケティング、プライシング、セールス。この4分野に特化し、コスト削減ではなく、トップライン(売り上げ)の成長を専門としています。
もちろん競合他社には敬意を持っていますし、競争は良いことですが、私たちはあくまで「コマーシャル(商業的)な成長」の専門家なのです。
――近年の業績や成長率は。
過去10年の売上高の平均成長率は12~15%でした。直近では地域やセクターによって異なりますが、5~10%の成長を遂げています。市場全体の成長率と比較すれば、この成長には大変満足しています。
――グローバルで事業を展開する中、日本市場をどう見ていますか。
日本は、私たちにとって極めて重要な市場の一つです。実際、2000年代にアジアで最初のオフィスを開設したのが日本でした。
日本は世界有数の経済大国であり、世界に名だたる企業が多く存在します。また、イノベーションを継続的に生み出している国であり、非常に大きなポテンシャルを感じています。
――ではプライシングの専門家として、日本企業の課題はどこにあるとお考えですか。
高いポテンシャルを評価する一方で、クルエッテン氏は日本企業が長年抱える「決定的な弱点」を指摘する。経営者が今すぐ実行すべき戦略とは何か。次ページで明らかにする。







