BCG泥沼訴訟 丸投げリストラの全内幕Photo:Andrii Yalanskyi/500px/gettyimages

ゴルフウエアブランド「パーリーゲイツ」などを展開するアパレル大手TSIホールディングスは、数十億円を投じてボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に収益構造改革を依頼し、大規模なリストラを進めてきた。だが、コンサルへの巨額支出とは裏腹に、退職勧奨する社員への割増退職金は激減していたことが分かった。長期連載『コンサル大解剖』内の特集『BCG泥沼訴訟 丸投げリストラの全内幕』第3回の本稿では、TSIが2015年以降に実施した3度のリストラの内部文書を独自に入手。その条件を比較し、BCGが助言した今回のリストラにおいて割増退職金がどの程度削られたのか、詳細を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

直近10年で3度のリストラ
BCG参画で割増退職金が激減

 ゴルフウエアの「パーリーゲイツ」、セレクトショップの「ナノ・ユニバース」、老舗ブランドの「マーガレット・ハウエル」や「アヴィレックス」。これら多数の人気ブランドを抱えるのが、アパレル大手のTSIホールディングス(HD)だ。2011年に東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合して誕生した同社は、積極的なM&A(企業の合併・買収)を重ねることで事業規模を拡大してきた。

 一方、同社は長年にわたり低収益体質から脱却できていない。プライム市場上場企業でありながら、PBR(株価純資産倍率)は0.6倍前後で推移し、1倍を大きく割っている。

 この危機感から、TSIは2024年、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に経営助言を求め、大規模な収益構造改革にかじを切った。本特集の第1回で報じた通り、BCGの改革案に含まれるリストラ計画に対し、法的リスクを指摘した法務課長までもが退職勧奨の対象となり、TSIとBCGを相手取って東京地裁に提訴する事態へと発展している。

 もっとも、TSIがリストラを敢行するのは今回が初めてではない。直近10年で、同社は計3回のリストラを断行しているのだ。

 15年は収益性の低い子会社を解散し、東京スタイルとサンエー・インターナショナルの計9ブランドを廃止した。これに際し、グループ内での人員再配置に加え、希望退職者を募っている。

 コロナ禍でアパレル業界全体が逆風にさらされた20~21年には、不採算事業からの撤退に伴い、300人規模の希望退職を募集した。

 そして24年、再び低収益体質からの脱却を掲げ、BCGの助言を反映した中期経営計画を公表し、本社人員の2割削減を掲げるリストラを実行した。

 24年に開始した収益構造改革において、TSIがBCGに投じたコンサルティング費用は数十億円規模に上る。しかし、その巨額支出の裏側で、社員に支給される割増退職金は、過去2回のリストラ時と比べて激減していたことが判明した。

 次ページでは、TSIが15年以降に実施した計3回のリストラの割増退職金を比較する。BCGの助言の下で進められた今回のリストラでは、過去と比較して割増退職金の支給額が7分の1になるケースもあった。数十億円規模のコンサル費用を投じながら、大幅に減らされていた割増退職金の全容を明らかにする。