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新卒者の就職先として人気が高いコンサルティング業界。現在では「とりコン(とりあえずコンサル業界に就職)」という言葉も普及している。20代でコンサル業界に身を置く若手は、次のキャリアについてどのような選択をするのだろうか。長期連載『コンサル大解剖』内の連載『コンサルキャリアの新潮流』の本稿では、コンサルからVCやPE、ヘッジファンドといった金融プロフェッショナルへの転職実態を解説する。ポストコンサルは、なぜ金融プロフェッショナルを目指すのか。(XG Partners代表取締役 蓮子哲也)
「コンサル→金融」の転職は増加傾向に
PEの中途採用は3~4割がコンサル出身者
コンサルティングファームから金融プロフェッショナルに転職するケースの傾向をまとめると、以下の通りです。
●候補者の志向性:全体的に成長意欲が高く、「よりハンズオン型の企業支援を経験したい」「金融・投資の力を使って株主経営を学びたい」など多様な経験や学びを求める方が多い
●成長機会・市場価値:幅広い企業を長期的に、かつ、近い距離で支援できる。経営知識や対応力など専門知識やスキルを身に付けることもでき、その後のキャリアの幅も広い
●給与:企業によって差が大きいものの、コンサルと同様に給与水準は高い傾向
●評価・昇進:コンサルと同じく、3~4年に一度昇進するのが一般的
●働き方:企業によって働き方は大きく異なるものの、自分で柔軟にスケジュールを組めるケースも多い
コンサルティングファームから金融プロフェッショナルへの転職は、この数年で確実に増えています。以下にコンサルから金融プロフェッショナルへの大まかな転職先割合をまとめましたが、弊社では特にVC(ベンチャーキャピタル)やPE(プライベートエクイティ)、Engagement Fundなどのファンド志望者を数多く支援しています。特徴は、35歳以下の方が多い点です。その層に焦点をあてた「コンサル→金融プロフェッショナル」転職の実態を紹介します。
まず、「コンサル→金融プロフェッショナル」における転職先割合は以下となります。
PE:30%
金融機関(銀行・証券):30%
VC:20%
ヘッジファンド・Engagement Fund:10%
アセットマネジメント ・ 保険:10%
金融プロフェッショナルへの転職はこれまで、同じ金融業界からの転職が主流でした。しかし、コンサル業界からの転職者は増加傾向にあり、例えば上記の転職先割合で最も比率の高いPEでは、中途採用の3~4割程度をコンサル出身者が占めるようになってきました。コンサル経験者に対する企業側のニーズはおおまかに以下が挙げられます。
PEファンド:投資先の事業分析(BDD)や企業価値向上(Value-up)に寄与できる人材
VC:投資活動全般や出資している事業会社におけるイノベーション支援ができる人材
Engagement Fund:企業分析、リサーチアナリスト業務やエンゲージメント活動ができる人材
金融プロフェッショナルにおいては高い専門知識や経験が問われますが、コンサル業界の経験は金融業界と近しい部分もあります。また、基礎的なドキュメンテーションスキル、プロジェクトマネジメント経験、ストレス耐性などのビジネススキル・素養はコンサル業界に身を置くことで鍛えられている方が多く、入社後も採用側のコンサル経験者の評価は高い傾向にあり、採用ニーズは旺盛です。
一方で求職者目線では、ポストコンサルの転職先が多様化したことで、メディアやSNSなどでキャリアステップに関する情報が増え、金融プロフェッショナルに対する「解像度」が上がってきたことが挙げられます。
ポストコンサルの転職先といえば、以前はコンサルティングファームと事業会社の二択が主流でした。しかし、その選択肢は徐々に広がり、近年はファンドに転職する人も出てきました。そうした前例が増え、その情報へのリーチが身近になったことで、業務内容や向き不向きといった情報が共有されやすくなり、選択肢として挙がりやすくなったのでしょう。
次ページでは、「コンサル→金融プロフェッショナル」転職でVCやPE、ヘッジファンドといったファンド別の特徴や求められるスキルなどを解説する。ファンドに転職することで得られるスキルや、その後のキャリア展望、給与、昇進、働き方などについても見ていく。







