BCG泥沼訴訟 丸投げリストラの全内幕Photo:PIXTA

ゴルフウェアブランド「パーリーゲイツ」などを展開するアパレル大手TSIホールディングス(HD)は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の助言を基に大規模なリストラを進めてきた。ところが、リストラ案の法的リスクを指摘したTSIの法務課長が自らも退職勧奨の対象となり、「退職強要に当たる」としてTSIとBCGを東京地裁に提訴していたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。長期連載『コンサル大解剖』内の特集『BCG泥沼訴訟 丸投げリストラの全内幕』では複数回にわたり、TSIが経営の中枢に関わる人員削減をBCG頼みで進め、両社の歪んだ関係の下で実行された“丸投げリストラ”の深層に迫る。初回の本稿では、元法務課長が退職に至る詳細な経緯や裁判の焦点を明かす。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

BCG案に異を唱えた元法務課長
部長は反対するも退職勧奨の対象に

「パーリーゲイツ」「ナノ・ユニバース」「マーガレット・ハウエル」「アヴィレックス」など、人気ブランドを多数展開するアパレル大手のTSIホールディングス(HD)。東京スタイルとサンエー・インターナショナルが2011年に経営統合して設立されたアパレル企業で、M&Aを通じて事業を拡大し、業界でも有数のブランド群を有している。

 同社は長年の課題だった低い収益性を改善するため、仕入れ原価の低減や需給管理の適正化、ECサイトの集約などを柱とする収益構造改革を進めている。

 この改革を助言しているのが、世界屈指の戦略コンサルティングファーム、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)だ。BCGは構造改革の一環としてリストラ案を提示し、24年9月頃から大規模な人員削減が実施された。

 その渦中にいたのが、当時、TSI法務部の実質ナンバー2だった法務課長だ。法務部はBCGが提示したリストラの手順書には法的リスクがあると判断し、法務部・人事部・顧問弁護士、そしてBCG担当者が同席する会議で懸念を示していたのだ。

 しかし、その後もリストラの基本方針は変わらなかった。

 それどころか、法務部長が部下の法務課長を退職勧奨の対象とすることに反対していたにもかかわらず、最終的に法務課長自身が対象者に加えられることになった。

 法務課長は退職後、「このリストラは退職強要に当たる」としてTSIを東京地裁に提訴。さらに制度設計を担ったBCGに対しても共同不法行為で訴えを起こした。あるBCG関係者は「リストラを助言したコンサルティング会社まで被告となるのは、極めて異例の事態だ」と打ち明ける。

 次ページでは、裁判資料や関係者への取材を基に、BCGが提示したリストラ案の中身と実行までのプロセス、そして法務部がBCG案の法的リスクを指摘してから、法務部長と法務課長の法務部トップ2人が退職に至るまでの壮絶な経緯を明かす。

 併せて、退職勧奨に詳しい専門家の見解を交え、元法務課長の主張とTSI・BCG両社の反論を整理しつつ、裁判で争点となるポイントを明らかにする。