フォルクスワーゲン、ホンダ、GMも減産!
EVつまずきもあって“泣きっ面に蜂”

 現時点では、特に欧州の自動車業界への重大なインパクトが確認できる。関連企業は代替品の確保を急いでいるが、一朝一夕に必要な部品を確保することは容易ではない。中でもドイツメーカーの影響はかなり深刻とみられる。

 ドイツの大手部品メーカー・ZFフリードリヒスハーフェンは、電動駆動装置などの生産削減に追い込まれた。主力工場では従業員の勤務シフトも減らしたようだ。主要部品の調達減で、フォルクスワーゲンは主要モデル「ゴルフ」の生産を停止すると報道されている。BMWも、サプライチェーンに影響が出ているとコメントしている。

 ステランティス(ジープ、プジョー、シトロエン、フィアット、マセラティなど14ブランド、本社オランダ)は、パワー半導体の供給状況を日夜モニターせざるを得ない状況に追い込まれているという。メルセデス・ベンツは、各半導体メーカーに代替品の在庫の有無を確認し、車載用チップやユニットの新しい調達体制の構築を急いでいる。

 近年、フォルクスワーゲンをはじめとする欧州メーカーは、急速なEV(電気自動車)シフトにつまずき、目下エンジン車やハイブリッド車の生産体制を再構築していた。これと並行して、ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV、従来のハードウエアからソフトウエアで機能や性能が定義・制御される車両)への対応も急いでいる。自動車業界が100年に1度の変革期にある中、ネクスペリア問題は泣きっ面に蜂のような状況だ。

 日本メーカーにも影響の波が押し寄せている。ホンダは米国とメキシコ、カナダで減産に追い込まれた。経営再建中の日産自動車は、26年3月期の売上高を下方修正した際、ネクスペリア問題の影響を織り込んだ。

 さらに米ゼネラルモーターズや、韓国の現代自動車などにも影響が出ているようだ。こうした事態に欧米の自動車メーカートップは、米中政府に問題の早期解決を求めているという。自動車生産の減少は、主要先進国の雇用・所得環境の悪化にもつながる。中間選挙を控えるトランプ大統領にとって、労働市場のさらなる悪化は避けたいところだ。

 たとえ今般のネクスペリア問題が収束しても、自動車業界は今後も多くの車載用チップを必要とする。米中対立をはじめ中国経済の減速や、欧州経済の成長率低下などは、自動車業界に向かい風が吹く中で、車載用チップ不足が再発したことは大きな痛手だ。

 10月30日の米中首脳会談で両国首脳は、貿易面での妥結内容に中国工場からのチップ輸出再開を盛り込んだようだ。レアアース輸出、米国産農産物輸入に加えて、汎用型の半導体分野でも、中国が米国より有利なことがうかがわれる。