書籍『自己決定の落とし穴』(石田光規 ちくまプリマー新書、筑摩書房)『自己決定の落とし穴』(石田光規 ちくまプリマー新書、筑摩書房)

「だからあれほど言ったのに」という論理が適用されやすいのです。そのため、個々人には責任の論理が作用し、ある方向の決定を抑制されることがあります。

 このような状況は、さしあたっての秩序の維持には都合がいいでしょう。その一方で、時として集団を暴走させる懸念があります。誰も集団の決定に対する責任をもたなくなるからです。こうした状況が、組織的な不正や戦争など、悲劇的な結果を招くこともあります。

 個々人の決定ばかりを優先していれば、社会としての統一性が損なわれ、社会が成り立たなくなる可能性があるのは事実です。その一方で、責任の体系を築き上げる社会や集団は時に暴走し、個人を圧迫します。

 自己決定と責任は、このような緊張をはらんだ関係にあることを意識することも大事でしょう。