男性が女性上司から「ちゃん付け」
呼ばれた時に感じるのは…

「ちゃん付け」のネガティブな面の理論値を極めたようなこうした「ちゃん付け」は全体の中に占める割合は少なかったとしても実際ありえるわけで、女性にしてみたらもはや「ちゃん付け」が最初から禍々しいサインに思えてくる向きもあるのではないか……などということが男性の立場から想像される。

 そうなってくるとその「ちゃん付け」に他意がどれくらい込められているかは関係なく、他意の含有量がごくわずか、あるいはゼロだったとしても「ちゃん付け」そのものが警戒の対象である。

 女性に下着や体型の話を振ったりとか、そこまでの直接さはなくても、「まあまあ気をつけた方がいい言葉」くらいの水準と見た方が無難であろう。

 とはいえ「ちゃん付け」は親しさを表す呼び方として日本語文化の中で自然なものとして受け入れられてきた積み重ねがあり、法も社会通念も、いきなり「ちゃん付けは100%ダメ」などとやろうとしているわけではない。

 先にも書いたが「ちゃん付け」の判決や教授の懲戒処分など、「ちゃん付け」はいくつか行われていたセクハラのひとつとして位置づけられていた。つまり「ちゃん付け」ひとつだけではレッドカードにならないが、他にも累積すると「ちゃん付け」も減点の対象になる――というくらいのバッファは設けられている。

「ちゃん付け」の効能は、距離が縮まる感じである。関係性によっては呼ばれると問答無用でささやかにうれしい。私(男性)が男性上司に「ちゃん付け」で呼ばれる時、かわいがってくれようとしているのが伝わって素直に喜べる。

 では女性上司から「ちゃん付け」で呼ばれるのはどうか。基本的に喜ぶと思うが、妖艶な気配のムンムンする女性上司から呼ばれたら、単純に「うれしい」だけでは済まなくなるかもしれない。

 呼ばれる側に身を置き換えてシミュレーションしてみると、呼ぶ人のキャラも「ちゃん付け」のトーンを決定する大きな要因になっていることが見えてくる。