羽田で起きた海保機の事故で
JAL機を迅速に撤去した会社とは?
今回の航空ジャンク市を主催したのは富山空港ターミナルビルと、富山に本社を置く豊富(とよとみ)産業という企業だ。同社は、自動車やバスの解体・リサイクルで培った技術を生かして、航空機の解体に参入。2024年1月2日に羽田空港でJAL機と海上保安庁機の衝突事故が起きた際、JAL機の撤去を迅速に遂行したことで、その高い対応能力が認められJALから感謝状が贈られている。
そんな豊富産業の仕入れノウハウと、マニアの心理を深く理解した価格設定こそ、このジャンク市が開催2回目を迎えられた理由だ。同社の高倉康氏社長は、航空機の解体・リサイクルに大きな商機を見いだしていると語る。
「老朽化した航空機の解体に伴って出てくるパーツを、業界全体が価値のある商品として注目しています。国内にとどまらず東南アジアにも拠点を展開できそうな期待の事業です」
コロナ禍が収束した反動もあって現在は航空需要が急増しており、保管されていた航空機が市場に戻るだけでは足りず、退役する航空機が減っている。現状の航空機を長く運用するために、整備部品として再利用可能な中古パーツの需要は高いという。
そうしたBtoB事業の一方、今回のイベントのようにBtoC事業にも積極的に取り組むのは、なぜか。ジャンク市の継続もさることながら、今後はアップサイクル(創造的再利用)に注力したいという。
アップサイクルとは、不用品にデザインやアイデアを施すことで、全く新しい価値を持つ商品に生まれ変わらせること。航空機でいえば、機内の座席をインテリア用の家具として再生する、機体の外板を磨き上げてアート作品やグッズにするなどだ。ジャンク市は、このアップサイクル製品にチャレンジするにあたってのリサーチ場、すなわちマニアの反応を探る場としての意味合いもあるようだ。
総じて豊富産業は、国内で他に例のない「航空機の終活」を請け負っていると言えそうだ。まさに、捨てればゴミ、生かせば資源。古い航空機に新たな経済的・文化的価値を与えるビジネスモデルは、大きな可能性を秘めている。
航空機の解体・リサイクルに商機を見いだす豊富産業の高倉康氏社長 Photo by K.K.
販売品の説明をする、豊富産業の山川秀宏執行役員(右)。成田の航空科学博物館出身で、航空機部品に詳しい Photo by K.K.
富山空港ターミナルビルの今井光雄社長。「ジャンク市は、飛行機に乗らない人も空港に遊びに来てくれるイベントで、遠方からの集客力は段違い。今後も開催を続けてほしい」と語る。富山空港は2026年4月から民営化される Photo by K.K.







