Cさんが自宅を相続して売ろうとしても、母親には配偶者居住権があるので、自宅に住み続けることは可能です。

 そもそも財産が自宅だけという父親は、亡くなる前に遺言書を残すべきでした。分け方を明記しておくことで、残された家族にも納得感が生まれます。

相続でもめたケース4
生前贈与を受けた姉ばかり不公平

 Dさんの姉は、結婚するときに親から200万円、子どもの教育費に500万円の援助を受けてきた。一方のDさんは独身で、何の援助も受けていない。

 相続のとき、姉は法定相続分で半々に分けようと言ったが、Dさんは納得がいかない。姉に「同じように贈与を受けたかったら、子どもを産めばよかったのに」と言われ、悔しくてたまらない。

 生前に受けとった財産は特別受益(遺産の先渡し)と認められるので、結婚費用の200万円を法定相続分から差し引くことは可能です。ただし特別受益は相続人のみ。姉の子に贈与された教育費500万円は姉の特別受益にはなりません。

財産はないと思っていたら
想定以上の相続税が発生

 ここまで見てきたように、親の財産が高額でなくても、きょうだい間でトラブルが発生する可能性は十分にあります。それでも親が遺言書を残し、そこに親の思いや願いが明記されていれば、家族は納得できるかもしれません。遺言書はぜひとも書いてほしいものです。

 でも本当は親が元気なうちに、相続について家族の気持ちを共有しておくほうがもっといいはず。

 家はどうしたいのか、財産は誰にどのような形で譲りたいと考えているのか、雑談の形でもいいので聞いておき、それをきょうだいで共有したいものです。

 親の財産を棚卸しすることも必要です。親にどんな財産があるかを把握しておけば、要介護になったときの金銭管理も楽ですし、死後の手続きや相続時の負担も軽減できます。

 日本人は「家族でお金の話をしない」という暗黙の了解がありがちですが、親が高齢になったらもう通用しません。