貸付料が持つ
2つの性格

 貸付料は2つの性格を持っている。整備に伴い発生する貸付料は工事費に対する負担と解釈できるが、貸付料はその路線の工事費に直接充てられるわけではない。

 貸付料の合計は793億円(2024年度末現在)であり、これを基本的な財源として、残りを国と都道府県が2対1の割合で負担して単年の工事費に充てている。貸付料に色は付かず、混ぜこぜになって工事費として出ていくのである。

 これを混同すると話が分かりにくくなる。例えば高崎~長野間の工事費は約8300億円だったが、貸付料の総額は5250億円(175億円×30年)だ。仮に貸付料を同額のまま20年延長すると総額8575億円となり、総工事費を超えてしまう。資金調達コストを含まないため単純比較はできないが、おかしな話である。

 だが、貸付料はあくまで受益に対して発生するものであり、工事費の回収とは直接関係がない。整備新幹線が公共事業として建設された「国民の共有財産」である以上、31年目以降をタダにするわけにはいかないのだ。

 そのため31年目以降も、金額はともかく、貸付料は発生するというのが政府の立場だ。国交省鉄道局長は2015年、「30年経過後においても、受益が発生する限りはその範囲内で貸付料をいただくという考えに変わりはございません」と見解を示しており、JR各社も明確に反対はしていない。

算定方法をめぐる
3つの論点

 というわけで、問題の核心は30年経過後の受益の算定方法である。

 最初の論点は大規模改修の費用負担だ。新幹線は概ね開業50年で橋梁やトンネルなどの改修が必要になる。東北・上越新幹線は開業49年を迎える2031年度から2040年度までの10年間で約1兆円を投じる計画だ。

 整備新幹線スキームが構築された当時は、大規模改修を要する時期は開業40年程度と考えられていたため、通常の維持管理で対応可能な「30年」に設定し、大規模改修の費用負担は先送りとした。

 整備新幹線のインフラは国(鉄道・運輸機構)が所有しているが、日常的な保守作業はJRが担っている。大規模改修もJRが担当するならば、その費用は貸付料から控除する必要があるだろう。貸付料が減ることはあっても増えることはないというのがJRの見解だ。