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携帯電話料金の値上げが相次ぐ通信業界。口火を切ったNTTドコモが通信品質問題で値上げに苦戦しているが、KDDIは通信の品質の高さを訴えた“正面突破”の値上げでモバイル収入の反転上昇に弾みをつけた。次なる一手をどう打つか。特集『総予測2026』の本稿では、KDDIの松田浩路社長を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二)
物価高で社長就任直後に値上げ断行
ドコモと明暗を分けた理由とは?
――松田社長は、2025年4月1日の就任からわずか1カ月後に料金改定を発表し、6月から新料金プランを導入。さらに8月には既存ユーザーにも値上げを実施しました。
インフレが続く中で、携帯を販売する代理店や基地局を造る工事業者といったパートナーに還元し、エコシステムを好循環になるように回さなければ設備投資は続けられません。われわれの中で料金改定の議論は、24年度下期から本格化していましたが、私は社長に就任してすぐにやると決めていました。
KDDIは外部機関から通信品質でナンバーワンの評価を得ているので、値上げは、スマートフォンでの衛星通信や、「5G」を優先的に利用できるといった「通信の価値」に対価を頂く形を取りました。値上げ後の通信事業の数値の動きは、ほとんどの項目で順調です。
通信の価値をつくって、その対価を頂き、しっかりパートナーに還元して次の投資をするという循環の1周目に入ってきたと思います。
――20年の官製値下げで通信各社は通信料収入の下落が続いていました。25年はKDDIとNTTドコモが値上げに踏み切ったことで、大きな節目となりましたが、7~9月期の業績では、KDDIの「モバイル収入」が増加した一方、ドコモは「モバイル通信サービス収入」を減らし、明暗が分かれています。その差をどう見ますか。
ドコモも値上げしたといわれていますが、実際には、映像コンテンツとのセットプランの新設による値上げで、われわれとは違います。通信の商品力そのものに対価を頂くという形の値上げは、まだ業界他社は付いてこられていないのが現状ではないでしょうか。
――ドコモが販促費を増やして契約獲得を進めている一方で、KDDIは「商品力競争」を強調しています。その狙いはどこにあるのでしょうか。
販売促進費を積み増して他社から契約を奪っても、1年以内に半分が抜けるような状況は、全く健全とはいえません。SIM単体で販売してMNP(電話番号を変えずに携帯キャリアを乗り換えられる番号持ち運び制度)で契約してくれたら2万円キャッシュバックするといった販売からは距離を置いています。
社内でも「販促費の物量作戦をやらないと他社に負けてしまう」というマインドに陥ることはありますが、それよりも「土俵を替える」ことが重要です。われわれの業界は「1円端末」が問題になった経緯もある。単なる価格競争や販促費競争ではなく、他の業界では商品の競争ができている。われわれの業界でも本当の意味で商品による競争をしていきたいという考えが強いです。
――ただ、7~9月期の業績は、全ての数値が完璧だったわけではないようです。ARPU(1契約当たりの平均収入)が上昇し、モバイル収入は増加した一方で、スマホ回線数の伸びは鈍化しています。これをどう見ますか。
既存ユーザーを含めた大胆な値上げに踏み切った松田社長は、NTTドコモが強化する販促費競争から距離を置くが、その狙いに間違いはないのか。また、26年は、官製値下げの中で収入を下支えしてきた楽天モバイルへのローミング(回線貸し)の契約期限を迎える。さらに、通信値上げの次なる課題として、AIデータセンターへの巨額投資の決断が迫られる。山積する問題にどう対峙するか。次ページで、就任2年目の松田社長が余すところなく語った。







