『農作物のひみつ』書影『農作物のひみつ』(日本作物学会、化学同人)

 キノコは豊富な栄養に加え、料理に香りと味(旨み)を与えてくれます。しかし、キノコの汚れを落とすために水洗いすると、キノコの魅力である香りや旨みの成分が溶け出てしまいます。キノコ類に含まれる栄養成分で、カリウム、ビタミンB、食物繊維のうちの水溶性のものは、水洗いすることによって溶け出します。このことから、キノコは水洗いせずに調理することが望ましいと言えます。

 スーパーで売っているキノコは汚れをきれいに落としているので、洗う必要はほとんどありませんが、山野に生えているキノコを採ってきた場合には、土などの汚れや虫がついていることがあります。その場合は、表面をペーパータオルなどで拭き取ります。また、傘の裏面のひだの中の汚れは、傘の上を軽くたたいて落とします。それでも落ちにくいものは、市販の「シリコーン刷毛(はけ)」を使うと効率的に落とすことができます。

 キノコの中でも水洗したほうが望ましいものもあります。ナメコなどはオガクズを土の代わり(培土)にして栽培しますが、そのオガクズが付着している場合がありますので、その場合は水で洗い流します。水洗いは短時間でサッと行うとよいでしょう。

【豆知識】
「香りマツタケ、味シメジ」と言うように、シメジの味は高価なマツタケに負けません。現在市販されているものは、ほとんどがシメジ科シロタモギタケ属の「ブナシメジ」で、「ホンシメジ」ではありません。マツタケの香りは、マツタケオール(不飽和アルコール)、グルタミン酸ナトリウム(うま味成分として知られる)、グアノシン一リン酸などの成分が混じり合って生み出されたものです。