仕事ができるコンサルは
あえてクライアントの“社内用語”を学ぶ

 もちろんコンサル業界には、こうした「相手の立場に立った会話」を得意とする人たちも存在する。

 言葉を大事にするコンサルは、抽象的な言葉や、意味が曖昧になりがちなカタカナ語を嫌う。自分の「当たり前」を押し付けるのではなく、分からない点があれば「どういう意味ですか?」とクライアントに質問し、認識を擦り合わせながら案件を進めることができる。

 それだけではない。クライアント企業に特有の専門用語や業界用語、中期経営計画で打ち出しているキーワードなどを積極的に学び、使おうとするコンサルもいる。この方法は「外部の人間」という壁を超え、クライアント企業に溶け込むための切り札となる 。

 こうして比べてみると、カタカナ語ばかり使うコンサルよりも、言葉を丁寧に扱うコンサルの方が仕事ができるのは明らかだ。

 あなたの会社がコンサルファームに仕事を頼んだ際、一方的にカタカナ語を連発する担当者が自社に来たら、すぐに本社にクレームを入れるべきだ――と言えば大袈裟かもしれないが、そのコンサルが業務改善に貢献する可能性は低いだろう。

 筆者は自戒を込めて、自分の中での「当たり前」に縛られないように、とある言葉を大切にしている。“Put myself in their shoes.”という英文だ。直訳すると「相手の靴に足を入れる(=相手の靴を履いてみる)」。著名なコンサルの書籍で目にした言葉である。

 人間は一人ひとり足の形が違う。自分が普段履いている靴は、他人が全く見たことのないものかもしれない。その逆も同様である。男性と女性、大人と子供。立場が違ったら、そもそも靴の種類が全く違う。

 だからこそ、自分の靴のサイズや形が当たり前だと思うのではなく、相手の靴を履いてみる。そして、自分とどのくらい違うのかを考える。すなわち、自分の当たり前を疑った上で、相手ならどう考えるかを想像する。コミュニケーションにおいては、この視点が大事なのである。