価格と構造をデザインする力が
プロダクト経営の本質

 本稿では売り上げを「価格×構造」というフレームワークで捉え直し、持続的な事業成長の鍵が価格の高低ではなく、価格を支える構造の設計にあることを論じてきました。プロダクト思考とは、価格と構造の両方を、開発の初期段階から一体のものとして設計する力に他なりません。

 近年、IT業界を席巻するPLG(プロダクト・レッド・グロース)の思想は、まさにこの「価格と構造のデザイン」の賜物です。「無料で試せる」という体験を通じてプロダクトの価値を伝え(価格設計)、ユーザー自身の口コミや紹介で自然と顧客が増えていく(低CAC構造)。この美しいモデルは、もはや一部の先進企業だけのものではありません。

 今、多くの日本企業に求められているのは、目先の機能開発や値付けの議論に終始することではありません。自社のビジネスモデルそのものを1つの「プロダクト」として捉え、顧客価値と事業価値が美しく循環する「価格と構造」をデザインし直すこと。それこそが、プロダクト経営の本質であり、不確実な時代を生き抜くための唯一の羅針盤となるはずです。

 さて、あなたの会社の「価格と構造」は、果たして「設計」されているでしょうか?

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)