総予測2026Photo:PIXTA

2025年9月に開かれた北朝鮮の最高人民会議で金正恩国務委員長は「われわれにとって『非核化』ということは絶対に、絶対にあり得ません」と語った。北朝鮮の核開発はどこまで続くのか。特集『総予測2026』の本稿では、北朝鮮の軍備拡張を支える経済基盤について詳述する。(聖学院大学教授 宮本 悟)

「国家経済発展5カ年計画」の最終年
核兵器の放棄はあり得ない

 北朝鮮が核兵器を放棄する可能性はこれからも全くない。もちろん、以前から、北朝鮮の最高指導者はそのことに繰り返し言及してきた。2025年9月21日に開催された最高人民会議(国会)における金正恩国務委員長の演説も、核保有の意思を強く示している。

「断言しますが、われわれにとって『非核化』ということは絶対に、絶対にあり得ません。米国とその同盟国が10年、20年、いや50年、100年にわたって『非核化』を熱心に合唱しても、朝鮮民主主義人民共和国の核保有という事実は、彼らが好むと好まざるとにかかわらず、変わることなく存続するでしょう」

 北朝鮮に非核化を求める国は、北朝鮮にとって敵となる。この2日後に韓国の李在明大統領は国際連合総会における演説で、「交流」(Exchange)、「関係正常化」(Normalization)、「非核化」(Denuclearization)を北朝鮮に求める「ENDイニシアティブ」を提唱した。これは韓国政府の意図とは異なるかもしれないが、北朝鮮に対決姿勢を示したことになる。北朝鮮はすでに23年末から北朝鮮と韓国の関係は、敵対する別々の国家の関係であると定義しているので、北朝鮮と韓国の軍事的な対立はこれからも長期間にわたって続くことが想定される。そのために26年以降も北朝鮮が核兵器を放棄することはあり得ない。

 北朝鮮では、どのような核兵器の開発を目標としているのであろうか。これは21年にすでに示されていた。この5年間の北朝鮮の軍備増強は、21年1月に第8回党大会で示された計画経済である「国家経済発展5カ年計画」の一部である「国防科学発展及び武器体系開発5カ年計画」に従ったものであった。25年はこの5カ年計画の最後の年である。5カ年計画では、国防工業発展の重要な課題の一つとして、核兵器の小型軽量化、戦術兵器化をさらに発展させて戦術核兵器を開発することが示されていた。

 射程距離の短い戦術核兵器のターゲットは米国ではない。間違いなく、韓国である。韓国が北朝鮮に非核化を求めれば求めるほど、北朝鮮は韓国に対して警戒心を持ち、戦術核兵器を開発することになる。この図式は、これからも長い間、続くであろう。だから、26年以降も、戦術核兵器の開発は続くことになる。

急ピッチで軍備増強を進めている北朝鮮だが、基盤となる経済はいまどうなっているのか。北朝鮮というと「飢餓」のイメージが強いが、それは約30年前の話で、食糧自給率は今や日本や韓国を上回っているという。次ページでは北朝鮮の経済について解説する。