規制強化により
米中の力関係は均衡状態に
米中対立の深化に伴い、両国は自国が相対的優位を持つ領域を政策手段として積極的に動員してきた。2024年までは、先端半導体関連企業を握る米国が、輸出規制や対中投資規制を発動し、攻勢を強めていた(図表)。
バイデン米前政権下では、重要な先端半導体や製造装置が中国に渡らないようにするため、2022年に対中輸出規制を発表し、エヌビディア製AI半導体も規制対象に含めるなど、段階的に規制強化を進めた。さらに、同盟・友好国への働きかけを強め、2024年にはオランダに対しASML製装置の対中輸出規制強化を実現するなど、同盟国を巻き込んだ規制網の構築を図った。
一方の中国は、レアアース管理体制の法的整備を進めつつ、2025年の米中関税合戦を契機に、本格的な輸出管理の実効運用に踏み込む構えを見せた。2025年4月にはレアアース関連品目に対する輸出管理強化を発表し、その後、米中協議の進展を背景に一時的な緩和に転じたものの、同年10月には、第三国経由輸出や精錬技術移転を対象とする追加措置案を提示した(最終的には米中首脳会談で当面の実施見送り)。
こうした米中の規制は、AI活用におけるチョークポイントを活用するものであり、米中のパワーバランスを極めて不安定な均衡状態に置いている。AI半導体とレアアースは米中双方にとって非常に敏感な領域となり、わずかな動きでも対立が一気に激化しかねない。当面、両国は目立った追加規制の発動は控えるとみられるが、緊張再燃の火種は残り続ける。
米中双方は、この不安定な均衡を前提に「強み」を活かし、「弱点」を埋める動きを進めている。中国は、将来レアアース規制に踏み切る場面があれば、すぐに実効性が発揮されるような管理体制の整備を続けているとみられる。
一方、米国はレアアースなど重要鉱物の新たなサプライチェーン構築に向け、同盟国との連携を強化している。日米首脳会談で署名された重要鉱物確保の枠組みや、関税合意に伴う対米投資案件における重要鉱物関連の位置付けは、その動きを象徴するものである。








