預金を減らした
地銀の顔ぶれは?

 24年10月1日現在の人口推計では、対前年比で人口を増やした都道府県は、東京都(+0.66%)と埼玉県(+0.01%)に限られる。東京スター銀行の1位を筆頭に、東京都内に本店を置くきらぼし銀行(13位)、東日本銀行(38位)は、いずれも預金を伸ばした。埼玉県内に本店を置く武蔵野銀行(34位)も、同様だ。

 対照的に、23年10月からの1年間で人口を最も減らしたのは秋田県(-1.87%)で、青森県(-1.66%)、岩手県(-1.57%)がそれに続いた。その秋田県に本店を置く秋田銀行は、昨年比+0.07%(74位)と辛うじて残高を増やしたものの、北都銀行は-1.16%(87位)と残高を減らした。

 その北都銀行を含め、前年比で預金を減らした地銀・第二地銀は96行中22行となり、全体に占める比率は22.92%と四分の一弱に達した。地銀・第二地銀の本店は、都道府県に均等に割り振られているわけではないものの、その22行中7行を東北6県管内の地銀・第二地銀が占めた。率直に言って、経済縮小の影響は非常に大きかったとみられる。

 個別の顔ぶれでは、27年1月に同じ県内の八十二銀行との合併が予定されている長野銀行(-12.56%)、昨年10月に福井銀行によって完全子会社化された福邦銀行(-8.63%)が96位・95位となった。福井銀行と福邦銀行は26年5月に合併が予定されている。

 長野・福邦の両行はいずれも相対的に規模が小さいため、同じ金額が減少しても減少率が大きな値として現れやすい第二地銀だ。両行とも、同一金融グループ内の経営効率化などの目的に沿った対応が図られた結果と見込む。

 地銀61行中、最も伸び率が低かったのは94位の荘内銀行(-4.06%)だが、同行の金融持ち株会社であるフィデアホールディングスは、傘下に87位の北都銀行(-1.16%)も持つ。両行ともに預金を減らしているところが気がかりだ。

 地銀・第二地銀の預金を巡っては、かねてより、各地域で信用金庫・信用組合・農業協同組合(JA)などの他業態、さらにゆうちょ銀行との獲得競争がみられてきた。近年では、それに加え、インターネット専業銀行との競合も激しくなっている。

 楽天銀行の9月末時点の預金残高は12兆2473億円で、地銀・第二地銀中4位の静岡銀行の12兆2239億円とほぼ等しいものの、対前年比伸び率は10.15%に達している。実店舗を持たず営業担当者も居ないインターネット専業銀行との競争は、日常必ずしも意識されるばかりではない。その一方で驚異的な伸びを示すインターネット専業銀行の預金残高からは、地銀・第二地銀各行に、インターネット専業銀行に見劣りしないサービス水準を求めていることを示していると考える。

(オペレーショナル・デザイン(株)取締役デザイナー/データアナリスト〈沼津信用金庫 非常勤参与〉 佐々木城夛)