クルマやスマホに使われる残価設定型ローンを
マンションになんて、どうかしている……!
では、国が普及を後押しする「残価設定型住宅ローン」はどうだろうか。
将来の売却を前提に売却想定額「残価」を決めて、その分は差し引いて返済するため、毎月の返済額を少なくすることができる。残価設定型ローンは車やスマートフォンを購入する際の選択肢として知られている。
毎月の返済は残価を除く分を分割で返済するが、金利は残価を含む借入総額に対してかかる仕組みだ。借主の気が変わり、住み替えによる売却をせずに住み続けたくなったら、残価分を支払うことで金融機関の担保を外すことができる。
金融機関は、借主が死亡した時や住み替え時に住宅を売却して残価を回収する。家屋の老朽化などにより、十数年後の売却価格が残価を下回るリスクは金融機関が持つことになる。
金融機関がリスクを持つローンだと簡単に普及が進まないということで、国土交通省は、住宅金融支援機構の保険を活用し、回収額が残価を下回った際の金融機関の損失を補償するようにする。今年度の補正予算で住宅金融支援機構に出資金14億5000万円を計上した。
これは国が行う住宅価格高騰対策だが、とても住宅購入者に勧められない。
これほど住宅価格が高くなると借入額も多額になる。残価を差し引いた分割払いだとしても、借入総額に金利がかかるわけなので、大きなメリットはないだろう。
また、将来の売却を前提に売却想定額を決めるなんて、不動産のプロでも難しい。車やスマホと1億円のマンションを同じ土俵で「残価設定型ローン」にするのはどうかしている。
国が住宅価格高騰対策を取るなら、残価設定型住宅ローンの普及よりも、値上がり目的での購入を規制するルール作りだろう。それも早急に。
住宅購入の相談を受けるたびに、この高騰、政策で何とか止めてよ!と思っていたところ、今月11日に国民民主党が議員立法「非居住住宅税及び超短期所有住宅等の譲渡に係る事業所得等の課税の特例の創設等に関する法律案」を衆議院に提出した。これは、居住目的でない住宅に課税する「空室税」導入の法案だ。
新築マンションを購入し、空室のままにするのは、値上がり益目的で短期売却を狙っているからといわれている。入居者がいないほうが、購入候補者が内見しやすく、買い手が見つかったら即、売却できるからだ。こうした投機的な取引により、さらにマンション価格は高騰するというスパイラルに陥っている。
国民民主党の「空室税」を導入する法案は、できるだけ早く国会を通過してほしいと願うばかりだ。







