たとえば、アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のアーウィン博士らは、健康な成人に一晩だけ睡眠を4時間に制限する実験を行いました。

 その結果、体内の「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」の働きが、普段より約70%も低下。NK細胞は、感染した細胞やがん細胞をいち早く攻撃する、免疫の最前線を担う存在です。この活性が大きく落ちると、感染症や病気にかかりやすくなります。

 さらに、アメリカ・カーネギーメロン大学の研究グループは、睡眠時間と風邪の発症リスクを調べる実験を行いました。

 153人の健康な成人を対象に、普段の睡眠時間を2週間記録した後、鼻に風邪ウイルス(ライノウイルス)を投与。その後の経過を観察したところ、平均睡眠時間が7時間未満の人は、8時間以上眠る人に比べて、風邪をひく確率が約3倍も高くなっていました。睡眠時間が短いほど、発症のリスクは高まる傾向も確認されています。

病院の当直がなくなった途端
風邪とは無縁の生活に

 私自身も、睡眠不足と免疫力低下の関係は身に覚えがあります。病院勤務医だった頃は週2回の当直があり、夜中でも急患対応でほとんど眠れませんでした。その頃はよく風邪をひいたものです。

 しかし、開業して救急対応が必要な当直がなくなり、睡眠を最優先にするようになってからは、ほとんど風邪をひかなくなりました。

 近年、新型コロナウイルスをはじめとする新種の感染症の流行が、私たちの生活を脅かしています。

 また、がんやアレルギー・自己免疫疾患など、免疫に関連する病気も増加傾向にあり、こうした疾患と睡眠不足の関連を示す研究も多数あります。

 免疫力を整えておくことは、感染症や自己免疫疾患を防ぐためにもとても重要です。

 睡眠不足が続く状態では、栄養やサプリ、運動を取り入れても、思ったような効果は得られません

 まずは睡眠の重要性を理解し、日々の生活の中でしっかりと確保することが大切です。

交感神経だけでなく
血管にも大きなダメージが…

 慢性的な睡眠不足を抱える人が増えている中で、睡眠不足の影響で、動脈硬化や高血圧など心臓や血管の病気(心血管疾患)の危険が高まることが、多くの研究でわかっています。