『ぐっすり!1万人を治療した専門医が教える最強の睡眠メソッド』(渥美正彦、徳間書店)
まず高血圧について。
2017年に発表された大分大学と日本大学の大規模な共同研究では、短い睡眠(5~6時間未満)の人は、7時間程度眠る人に比べて高血圧になる危険が約17%高いという結果が出ました。生活習慣などを考慮しても、この傾向は変わりませんでした。
血管の老化を意味する動脈硬化についても証拠があります。
2018年のジョンズ・ホプキンス大学の研究では、会社員の健康診断データを詳しく調べ、短すぎる睡眠や長すぎる睡眠の人ほど、血管にコレステロールのかたまり(プラーク)が多いことがわかりました。
なぜ眠らないと血圧や血管に悪いのでしょうか。大きな理由の1つは「自律神経のバランスの乱れ」です。
睡眠が足りないと、体を緊張させる「交感神経」が働きすぎて、心臓の動きが速くなり、血管が縮みやすくなります。
次に影響するのは、「ストレス反応」です。
睡眠不足になると体がストレスに対抗しようとしてコルチゾールを大量に分泌します。これは短期間であれば体を守る反応ですが、長期に続くと高血圧や動脈硬化を悪化させ、心臓や血管の病気のリスクが高まるのです。
もう1つの理由は「炎症」です。
睡眠不足や質の悪い睡眠が、体の中の炎症物質(CRPやIL-6など)を増やすことが複数の研究で判明しています。炎症が続くと、血管の内側の細胞(内皮)が傷み、プラークができやすくなります。
自分に合った十分な睡眠が
心臓や血管の健康を守る
さらに、「代謝の乱れの影響」も無視できません。
1999年のシカゴ大学の実験研究では、短い睡眠を続けると血糖値の調整が悪くなり(インスリン抵抗性)、代謝が乱れることが示されました。血糖や脂質の異常も、血管を老けさせる大きな要因です。
2022年にアメリカ心臓協会(AHA)が発表した「Life’s Essential 8」では、心臓や血管の健康を守るための重要な要素のひとつとして「睡眠の質と量」が明確に位置づけられています。
心血管疾患は命にかかわることも多いため、慢性的な睡眠不足や睡眠障害が疑われる場合には、十分な睡眠時間を確保するとともに、専門医による診断や評価、適切な治療を受けることが推奨されます。
健康な血圧と血管を守るためには、自分に合った十分な睡眠を、毎日しっかり確保することが基本です。







