軍需事業売却がもたらした二つの弊害
だが、アイロボットは、2016年に軍需事業を売却する。この意思決定は、二つの弊害をもたらした。一つは、シナジー(相乗効果)の消失である。
アイロボットの両事業にはシナジーがあった。軍需ロボットの地雷探知アルゴリズムが、掃除ロボット「ルンバ」に生かされ、「ルンバ」で得たノウハウが、軍需ロボットに生かされる。相互にフィードバックし合い、シナジーが機能していたのだ。だが、事業売却によりシナジーは消失し、革新的な製品が開発できなくなってしまった。
もう一つの弊害は、マーケティング・マイオピア(視野が狭くなる状態)に陥ったことである。軍需事業売却後、アイロボットの事業領域は「『家庭向けの』『床の』掃除ロボット」と極めて狭くなった。その結果、「楽にキレイにしたい」というニーズが見えないマーケティング・マイオピアに陥ってしまった。
家庭向けに専念すべきなのか? 床掃除への対応だけで良いのか? 新機能を搭載する必要はないか? マーケティング・マイオピアは市場を見る目を濁らせる。軍需事業の売却は、製品開発と市場把握の両面で弊害を引き起こしたのだ。
アイロボットの軍需事業は、現在、テレダイン・テクノロジーズが引き継いでいる(テレダイン・テクノロジーズ公式サイトより引用)
「物言う株主」が求めた事業分割
では、なぜアイロボットは軍需事業を売却したのか。その理由として大きかったのは、「物言う株主(アクティビスト)の圧力があったから」だと言われている。







