ロサンゼルスを本拠地とするアクティビスト「レッド・マウンテン・キャピタル・パートナーズ」は
・軍需事業の売却
・消費者向け掃除ロボット事業への注力
・1億ドル以上の自社株買いと定期配当の実施
を提案し、これらのプランを実施すれば、「アイロボットの市場価値は短期間で50%上昇する」とアピールした。
こうしたストーリーで他の株主を扇動し事業売却を促すのは、アクティビストの常套手段である。アクティビストたちは「単一事業の企業」を好む一方、複数の事業を内包する「多角化企業(コングロマリット)」を嫌う。売買しにくいからだ。
企業が多角化する理由の一つは「リスク分散」だ。だが、アクティビストたちは、複数の「単一事業の企業」に分散投資しているため、自分たちのリスク分散はできている。企業にリスク分散してもらう必要はない(されるとむしろ迷惑だ)。だから、企業を分割し単一事業化を提案することが多くなる。アイロボットも例外ではなかった。
米アイロボットの財務状況
こうして「家庭向け掃除ロボット」という単一事業に特化したアイロボットの財務状況は、劣悪なものとなった。
冒頭の、アイロボットジャパンが発したプレスリリース(25年3月15日)は、以下のように締めくくられている。
「私どもの事業は通常通りであり、当面のビジネス上の義務を果たすのに十分なキャッシュと流動性を保有しており今後もそれを継続して参ります」
だが、この時点で「通常」でも「十分」でもなかった(※)。キャッシュ(現金等)はわずか「6992万ドル」。前四半期(24年12月末)「1億3430万ドル」のおよそ半分に減少していた。株主資本はマイナス79万ドル。資本がマイナス、つまり負債の額が総資産の額を上回る「債務超過」に陥っていた。
※25年5月6日発表「2025年3月29日時点業績(25年第1四半期業績)」に基づく







