直近値(25年9月末)はさらに厳しい。キャッシュは「2483万ドル」に減少し、株主資本はマイナス2689万ドルと、債務超過が一段と悪化している。
収益面も惨憺たる状況だ。5年間の推移(20~24年度)をまとめると以下のようになる。
営業利益:「1億4632万ドルの黒字」から「1億2751万ドルの赤字」へ転落
粗利率(売上高総利益率):「47%」から「22%」へ低下
安全性・収益性とも極めて低く、破産法申請もやむを得ない状態だったと言える。
事業売却決定が、株主の圧力によるものだったとしたら、経営者としては忸怩たる思いだろう。圧力をかけた株主たちは、すでに株主ではなくなっている可能性が高い。被害を被るのは、長年製品を愛用してきた消費者、実直に働いてきた従業員、そして同社を信用して取引してきた企業である。「誰を大事にするのか」。今一度考える必要があるだろう。
買収したのは、中国でルンバを製造していた企業
経営状況が悪化し、破産申請したアイロボットを買収したのは、ルンバを製造していた中国企業PICEA(Shenzhen PICEA Robotics Co., Ltd.およびSantrum Hong Kong Co., Limited)だった。
今後、アイロボットは、PICEAの傘下となる。同社は、「世界の高級ロボット掃除機の10台中3台をPICEAグループが造っている」といわれるサプライヤー、OEMメーカーである。
アイロボットの主要製造パートナーであると同時に、ゼネラル・エレクトリック、フィリップス、ハイアールなど名だたる企業の製品・部品製造を担ってきた。今後は、「iRobot」「ルンバ」ブランドを最大限に活用し、ロボロック・エコバックス・ドリーミーといった中国企業と伍していくことになる。
アイロボット製品は日本で人気が高く、市場シェアは約6割を占める。サポート継続やデータ漏えいの不安も囁かれている。PICEAには今後、ぜひ世界中のユーザーが安心して購入できる体制を築いていただきたい。
「ルンバのお助け大掃除プロジェクト」として行われた、神田明神の煤(すす)納め(アイロボットジャパン合同会社プレスリリースより)







