「エンジンを取ってしまえばいい
とまで言ったら、あきれられたよ」
鈴木修氏は社長に就任するや、開発中だった「初代アルト」の「やり直しプロジェクト」を発出。いかにムダをなくしてコストを下げられるかを命題にした。
「最後は『エンジンを取ってしまえばいい』とまで言ったら、あきれられたよ」
79年5月、「全国統一47万円」で初代アルトが発売された。発表会では修氏自ら「あるときは通勤に。あるときはレジャーに。あるときは買い物に」と宣伝。アルトを貨客兼用の軽ボンネットバンで展開する画期的な発想を、分かりやすくキャッチコピーにしたのだ。折しも女性が社会進出するトレンドに差し掛かっていた。
「いま風に言えば、マルチパーパスだね」と修さんは鼻をぴくつかせながらニンマリ振り返っていた。ちなみに修さんは眉毛も特徴的だった。
初代アルトはスズキを復活させると同時に、軽自動車の新たな方向性を形作った。筆者が経営力とは何かと尋ねた時、修さんは「判断力とか行動力とか言うけど、私の場合は危機感だった」と言い切っていた。
1979 | アルト(2サイクルエンジン車) 初代 Photo:スズキ







