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2025年の世界経済はトランプ関税に振り回され、先行きが危ぶまれた。しかし、終わってみればAI投資の急増で経済は拡大し、主要国の株価も最高値を更新した。だが、26年以降もこの好調が続くとは限らない。歴史的なショックは、好調な経済、相場の後に訪れることが少なくない。特集『総予測2026』の本稿では、中空麻奈BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長、武田洋子三菱総合研究所常務研究理事、大槻奈那ピクテ・ジャパンシニア・フェローの3人に、26年以降の世界経済のリスク要因を総点検してもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田孝洋)
顕在化するトランプ関税による物価押し上げ
拭えないインフレ再燃懸念
――世界経済をリードする米国経済をどう見ますか。
大槻奈那氏 当社では2026年の米国の実質GDP(国内総生産)成長率を1.5%程度とみています。潜在成長率と一致するか、少し低い程度です。
リスク要因はこれから顕在化するトランプ関税の影響が、インフレ率への影響として出てくると考えています。企業が吸収していた分が吸収し切れなくなり、26年は販売価格に転嫁されてインフレ率が上昇する。そこを危惧しています。
26年は2回程度の利下げとみています。ただ、雇用に重点を置いて利下げを断行すると、インフレ懸念はどうしても残ってしまう。実際、米ミシガン大学の調査などで見ても期待インフレ率は高く、自己実現的にインフレが定着するリスクがあります。
中空麻奈氏 私も関税の影響でインフレになるという点に注意しています。ポイントは高いインフレ率が消費へどこまで影響するか。大きな問題はないという見方が多いのですが、低所得者層や若年層を中心にクレジットカードやローンの延滞率が上がってきており、影響は出始めているとみています。
武田洋子氏 米国経済について、私はお二人よりもやや明るい見通しを持っています。
第一に、関税の影響は当初想定ほど大きくありません。理由は、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)など既存枠組みを活用した申請が増えていること、さらに高関税を課せられた中国などの国が輸出拠点を他国に移し、耐性を付けてきたことです。
第二に、AI投資が非常に堅調で、関税の悪影響を覆い隠すことが予想されます。
第三に、米国の消費は富裕層中心に堅調です。中空さんが指摘された通り、低・中所得者層の延滞率が上昇しており、今後さらに悪化する可能性があるという見方は同じです。ただ、消費の6割を上位20%の富裕層が占める構造の中で、AIに対する期待が続けば、株価上昇に伴う資産効果が消費を押し上げるでしょう。
次ページでは、米国でのインフレ再燃以外のリスク要因について徹底検証する。ノンバンク(NBFI)やプライベートクレジットの質、AI投資の行く末などについて3人に分析してもらった。







