航空自衛隊に残る
意外な迷信とは?

 薗田さんは「『レーダーの前に立ってはいけない』『電波を浴びると女の子しか生まれなくなる』と言われていました」と明かす。

 実際はもちろん、レーダー波と子どもの性別に因果関係はない。このことは航空自衛隊が過去に公式発表している。このタブーが生まれた経緯は定かではないが、「エンジンやプロペラの前に立ってはいけない」といった安全対策上のルールが発展し、独自の意味を帯びるようになった可能性がある。

このほか、「航空機は“機密の塊”であるため、同じ航空自衛隊に所属しているとはいえ『他の職種や組織の話をむやみに聞いてはいけない』という暗黙の了解がありました」と薗田さんは振り返る。

 いかがだっただろうか。口笛禁止。ポケットハンド禁止。石ころ禁止。レーダーの前に立つことの禁止。独自ルールの裏側には、命を守るための合理性と、長い歴史の中で生まれた不思議な慣わしが混在している。

 陸自は地上で、海自は波間で、空自は大空で、それぞれ独自の文化を育んできた自衛隊。彼らのルールやタブー、暗黙の了解を知ることは、日本の防衛最前線で働く自衛官を理解する第一歩だ。

 空自は2026年度中に「航空宇宙自衛隊」に改編される。大空の先にある「宇宙」では、どんな慣わしが生まれるのだろうか。 

【前編から読む】「雨の日も傘を差してはいけない」自衛隊の鬼ルールはなぜ?→「そりゃそうだ」と思える納得の理由