富裕層必見! 資産防衛&節税術Photo:PIXTA

近年、グローバル化の進展に伴い、日本人が海外に移住したり、外国籍の人が来日して定住(名目上は「研修」になっていても実質的に移民に近い形態)したりするケースが増加している。これに伴い税務訴訟が頻発している「為替差損益」への所得税や「出国税(国外転出時課税)」などの落とし穴について、連載『富裕層必見!資産防衛&節税術』の第13回では、国際的な課税の側面から注意すべきポイントを徹底解説する。(税理士・元国税「富裕層管理」チームOB 八幡谷幸治)

「円転」してないのに課税!?
「為替差損益」に要注意

 本連載の第5回では、日本のグローバル化の進行によって急増している「居住・非居住の問題」や「源泉徴収の問題」などの注意ポイントとその解決策を見た。本稿では税務訴訟に発展するケースが増加している「為替差損益」に課せられる所得税や「出国税(国外転出時課税)」における落とし穴など、以下の注意すべきポイントを解説しよう。

(1〉「為替差損益」への課税を巡る問題点
 繰り返しになるが近年、「為替差損益」に関する問題が税務訴訟となるケースが増加している。所得税における為替差損益の問題は、従来から「あいまいである」と問題視されてきたが、明確な指針がないまま長年、実務上の課題となっていた(なお法人税法においては、複式簿記により認識されるため、所得税法と比較して明瞭といわれている)。

 この問題が顕在化してきたのは、平成20年代に入ってから国税庁がホームページで公表した「質疑応答事例」において、為替差損益として扱う対象をかなり拡大して公表したことが要因だと筆者は考えている。

 ちなみに、それ以前の所得税法上の為替差損益の認識は、担税力の観点から「円転」した際(外貨を円に換えた時点)に初めて為替差損益として所得認識すべきだ、と判断していたと聞き及んでいる。

 話を戻そう。例えば、為替差損益というと、円からドル資産に投資を行い(仮に1ドル=100円とする)、ドルから円に換えた際に(1ドル=110円)、10円の為替差益となることはイメージがつきやすいだろう(所得税法上は「雑所得」として課税され、累進課税の対象となる)。

 ところが、前述の国税庁の質疑応答事例においては、上記のようなパターン以外にも、ドル投資の途中で預金から不動産に投資変更した場合(仮に1ドル=120円)、円転していないにもかかわらず20円を課税の対象と考えるとしており、その指針に基づいて、税務調査で課税処分を受けるケースが増加しているのだ。

 次ページでは、その理由と問題点を解説するとともに、「出国税」の落とし穴や国税OBだから分かる国税当局の富裕層に対する課税方針を明らかにする。