――育児・介護休業法の25年の改正では、介護支援制度の従業員への情報提供も義務化されました。制度等の情報共有の施策はどのようにしていますか。
自助努力のベースは、介護に関する知識を得ることだと考えています。その中心となるのが「介護両立ハンドブック」で初版は13年、23年に全面リニューアルしました。この一冊で介護の全体像が分かるように、会社と行政の介護情報をコンパクトに凝縮してまとめたものです。このハンドブックは、社内ポータルでいつでもダウンロードや印刷が可能です。
介護の基礎知識、会社の支援制度や相談窓口についての紹介はもちろんのこと、社員向け・上長向けのコミュニケーション手引き、上司部下の面談のための面談シートなどを盛り込んでいるところが特徴です。
例えば、社員向けのコミュニケーションの手引きでは、介護が必要かなと思った段階で、まず人事部に一報を入れ、両立支援制度と面談に関する案内を受けるなど、最初の一歩を早めに踏み出してもらえるように促しています。
上長向けコミュニケーションの項目では、メンバーから相談を受けた際には面談を実施し、介護の状況や当面の課題・働き方の希望などを確認するとともに、必要な業務調整や職場運営を進めること、チームとして円滑に仕事が回るよう日頃から業務の整理をしておくことなどを案内しています。
――上司と部下の面談シートとは、どういうものですか。
介護に直面した場合、社員と上長との間で、必ず面談を一度は実施してもらうことになっていますが、そのとき、何を話したらいいかというのがなかなか難しいところです。そこで、厚生労働省が公表している面談シートを元に花王版を作成しました。
誰にどのような介護が必要か、どの制度を利用してどのような働き方をしたいかを社員が記入し、上長との面談で目線を合わせます。面談後は上長がチームの体制について記入し、最終的にその内容を社員と共有するという流れになります。
社員に周知するための二つ目の柱は、毎年11月に実施している仕事と介護の両立セミナーです。花王では、11月を介護啓発月間と位置づけ、社内ポータルに特設ページを設けるとともに、外部専門家を講師に招いて10年から継続開催しています。
――11月11日の「介護の日」に合わせているのですね。
過去には介護の基礎知識、認知症、介護ストレス、会社の支援制度の使い方、遠距離介護、施設介護などを取り上げました。24年は公的介護制度をテーマに、制度の概要や地域包括支援センター、ケアマネジャーとの付き合い方などを解説していただき、大好評でした。25年には、「無理をしない&無理をさせない介護」と「知らなきゃ損する!介護のお金」という講座名で実施しました。
コロナ禍以降はオンライン開催にしましたが、かえって参加者が増えました。「社内ポータルでもぜひ見てください」と呼び掛けていますし、40歳以上の社員には個別メールでも案内しています。期間限定で録画した動画も配信し、長く活用できる内容は社内ポータルで常時公開しています。
介護経験を含め、多様なバックグラウンドを持つ社員の体験談を顔出しで紹介する「Kao Mates」という企画も、DE&Iポータルで公開していまして、こちらも大きな反響があります。
細かいところでは、各職場から選出された社員が集まる委員会があり、そちらでも常に介護に関して、人事部への一報、面談の必須化、冊子の読了といった重要な告知を繰り返し掲示しています。
――セミナーは16年前から開催しているのですか。eラーニングプログラムも作成されていますね。
はい。制度があるだけでなく、制度が使いやすい風土を作ることが大切です。そのためには、社員が安心して対話できる環境が大切だと考え、心理的安全性とアンコンシャスバイアスをテーマとした全社員向けのeラーニングを21年から実施しています。
対話ができる環境が、お互い様意識の醸成につながると信じています。動画の終わりには、確認テストもあります。管理職から始めて全社員が学ぶ機会を設けています。








