生理痛が引き起こすさまざまな「痛み」は
1日の体験では理解できない?

 痛みが周期的にやってくることに対する月1回のルーティン的な備えや、不安や憂うつ、あるいは痛みによって引き起こされる不利益など、すべてをひっくるめたものが生理痛がもたらすディスアドバンテージである。

 これを100%追体験するには、当然ながら生理痛体験だけでは足りないわけである。

 生理痛体験と同種のものとして、視覚障害や聴覚障害を模したり、街の中を車椅子で移動する試みなどが挙げられる。これらの「ハンデキャップを理解するために体験する」アプローチに関しては、実はかねてから議論がある。

 想像しかできなかったものがある程度実像を結んで体験できるので、より深く共感できる……というのがハンデキャップ体験のおおまかな狙いであり、実際にそれは多くの場合達成される。

 だが、不十分な理解なのに本人が「理解した」と満足してしまったり、体験した人にとっては体験会がどうしても非日常的なイベントになってしまうところに構造的な難しさがある(ハンデを抱える人はハンデを抱えた日常がずっと続く)。

 そうした仕事に長年取り組んできたアメリア・アブレウという女性は、ハンデキャップ体験が浅い理解しかもたらさないのではないかと疑問を持つようになったという。

 氏が紹介するアメリカ心理学会の論文によると「障害シミュレーションは、障害を持つ人々に対する恐怖、不安、哀れみの感情を引き起こすことが多い」と指摘されている。

 その結果「シミュレーション参加者は障害のある人の真の能力を過小評価してしまう可能性がある」というのである。これはハンデキャップ体験・障害シミュレーションがもたらしうるデメリットの側面に関する考察である。

 人間関係に哀れみや恐怖、不安が介在すると対等ではなくなってしまうので、それもベストじゃないよね、というところであろうか。打開策として、その研究の筆頭であるミシェル・ナリオ=レドモンド博士は「異なる能力や障害を持つ人々と公平な人間関係を築くこと」を提案している。

 生理痛を理解するアプローチには、体験研修以外にどのようなものがあるかをざっと調べてみたところ、海外ではワークショップ的なものが目立って多い。