今後のVRの技術の発展で
さまざまな人の状況を理解るす助けに

 おばあちゃんはケーキを作るべく、小麦粉と牛乳を混ぜたり、クリームを加えたりといったタスクをこなしていくのだが、おばあちゃんが痛みや不安、希望に関する独り言をつぶやくので、プレイヤーはそれらを聞いておばあちゃんの状態や心理を理解していくわけである。

 動作にも制限が課されていて、なんでもキビキビとは動くことはできない。また、特に痛みを感じる動作は画面を赤くすることで、プレイヤーに痛みを視覚的に仮想体験させる仕組みになっている。

 19人がプレイし、プレイ前後の状態を測定したところ、プレイヤーの親切さや「助けたい」という行動意欲や、慢性疼痛患者への理解が高まるのを有意に確認できた一方、共感の大幅な向上は統計的に示されなかった、とのことである。

 VRゲームを使った痛みへの共感力育成のアプローチはこれまでさかんに行われてきたわけではないから今後のステップにもなりうる有意義な研究で、高齢化社会の進展を踏まえるとさらに有用度を増すゲームかも……と研究レポートは結んでいる。

 このVRゲームも生理痛体験もそうだが、どのような心構えでそうした装置を使うのかが肝要であろう。それらの装置を使ったことで完全な理解が得られたりだとか、すぐに相互理解が進展する万能さを期待するのは危険である。

 そうではなく、理解を進めるきっかけづくりとして位置づけるのが望ましい。生理痛体験そのものが理解を促進することはもちろん、そうした体験会を催すことでオープンな話がしやすい雰囲気が作られる効果も見込まれる。

 VR技術がもっと発達したら、さまざまな状況にある人を理解するためのシミュレーションがさらに進むのだろう。それが相互理解の一助となることを祈るばかりだ。