会社は生きているものだから
新 会社は「法の人」でしょ、生き物ですからね。だから平均寿命が30年といわれるんです。
経沢 仲間どうしで会社の存続や後継者について話すことがあるんですが、みんないろいろな考えを持っています。私の場合は、もしも自分が死んだらどうしようと考えたり、今後を見据えて若手に新規事業を任せたりしています。
そこで新先生にうかがってみたいのですが、会社の寿命が30年ならば一代で終わりですよね。それ以上に長生きさせるためにはどうしたらいいのでしょうか。
新 私が45歳でジョンソン・エンド・ジョンソンの社長を任命されたときに、当時のCEOと会談しましてね。「まずは就任おめでとう」と祝福してくれたのですが、その後で彼がこう言ったんです。
「君はこれから社長職を務めるが、いつか職を辞する日がやって来るだろう。そのときまでに君が後継者を育てていなければ、私は君に50点以上の点数はつけられない」。
どんなに業績を上げても、後継者が育っていなければ経営者として落第だと言うんですよね。経営というのはそういうものなのだと目から鱗が落ちました。
経沢 なるほど。
新 自分の後を誰かにバトンタッチできなければ、会社は止まってしまう。後継者をつくらない経営者は経営者として失格だと私は思っています。ではどうやって素晴らしい後継者を得るのかといったら、まず採用ですよね。
スキルは入社後にトレーニングできます。しかし個人の人柄や人格はトレーニングだけではどうにもならない面がある。価値観や理念を共有できるかどうかはトレーニングできません。
だからこそ“人財”をどう選ぶか、採用が大事なんです。金は少し汚れていても磨けばぴかぴかに光ります。銀は磨けば銀なりに光ります。でも銅はどうにもならないんです。