
米大統領は絶大な権力を持つものの、実は日本の総理大臣と比べてさまざまな制約が課されている。トランプ大統領も全てを好き勝手にすることはできず、個々の政策ではむしろ米議会や議会内の特定ポストの重要性が高まってくる。特集『トランプ人脈 全解剖』の#4では、米議会のルールを読み解くことで、トランプ氏が権力を振るう上での“急所”を探る。(共同ピーアール総合研究所主任研究員 渡辺克也)
三権分立が確立している米政治
トランプ大統領が無視できない米議会
世界で最高の権力を持つ男――。
アメリカ合衆国大統領と聞くと、強大な権限が1人に集中しているかのような印象を受ける。しかし実際には、日本の総理大臣と比べても、大統領にはさまざまな制約が課されている。ドナルド・トランプ大統領がなんでも好き勝手にできるわけでは決してない。むしろ、個々の政策については、米議会やその特定のポストが重要になってくる。
2024年の大統領選挙で、「単一執行府論」という言葉が話題になった。トランプ政権に多数の人材を送り込んだシンクタンク、ヘリテージ財団による政策提案「プロジェクト2025」でも掲げられた合衆国憲法の解釈に関する政治理論だ。大統領の権限を広く解釈することで、従来よりも影響力拡大を目指すものである。
ただし、そこで例に挙げられたのは、政権交代で公務員が大幅に入れ替わる「リボルビングドア」の対象拡大や、独立性の高い司法省や連邦準備制度理事会(FRB)といった行政組織への介入である。いずれも、大統領が長を務める行政府の域を出るものではない。
建国以来、三権分立の原則が確立している米国では、立法府である米議会は、依然として大統領から独立しており、その影響力は無視できないものとなっている。
次ページでは、米議会のルールを読み解くことで、トランプ氏が権力を振るう上での“急所”を探る。