
三菱ケミカルグループ、住友化学、三井化学の財閥系化学大手3社の2025年3月期決算が出そろった。住友化学は医薬品子会社の業績が大幅に改善し、黒字転換を果たしたほか、三菱ケミカルは前期比で減益となったが、傘下の田辺三菱製薬を売却するなど構造改革を進める。三井化学も計画を下回り、減益の着地となったが、3社で比べると、2社よりも早く構造転換に踏み切った三井化学の市場評価が高い。特集『激動!決算2025』の本稿では、市場が三井化学を評価する理由を明らかにする。ただし、先行する三井化学にも懸念は存在する。その懸念とは。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
三井化学は3期連続で期初予想未達
26年3月期の純利益は7割増予想も...
2025年3月期決算の発表後に株価が上昇したのは、財閥系化学大手3社では三菱ケミカルだけだった。その理由はひとえに自社株買いだろう。25年3月期決算では化学業界に限らず自社株買いの有無が業績以上に株価に影響を及ぼすケースが多かった。三菱ケミカルの自社株買いは最大500億円で、「5000億円という過去最大規模の自社株買いを発表した信越化学工業に比べ規模は大きく劣るものの、実施したことが大きかった」(機関投資家)。
住友化学は24年3月期の巨額赤字からV字回復を果たしたが、株価は軟調だ。決算発表直前から27日まで約8%下落している。住友化学は、医薬品子会社の住友ファーマの業績回復や、サウジアラビアでのペトロ・ラービグの改善策だけでなく、この1年で中国の液晶パネル関連事業からの撤退、放射線医薬品子会社の売却、採算性の低い石油化学事業からの撤退やプラント停止など矢継ぎ早にリストラに踏み切ってきた。だが、あるアナリストは「リストラの手数が多いことや住友ファーマの好決算で事前に期待値が上がっていた割には物足りない決算内容だった」と指摘する。
三井化学はどうか。25年3月期にはエチレンプラントのトラブルが利益を押し下げた。だが、26年3月期は、これが消えるほか、半導体材料の伸びもAI(人工知能)やデータセンター向け需要が期待できる。26年3月期の連結純利益は前期比71%増の550億円になる見通しだ。しかし、株価は住友化学と同じく軟調だ。決算発表直前から約7%下落している。理由は、当初計画の未達にある。前出のアナリストは「23年3月期から3期連続で期初予想の営業利益が未達となった。今期の増益予想計画を市場は信頼しなかった」と話す。
株価で見ると、三菱ケミカルと、その他2社で明暗が分かれた格好だが、別の指標で見ると、実は計画未達で自社株買いも実施しない三井化学の評価が一番高い。市場は三井化学の何を評価しているのか次ページで探った。市場評価が高い三井化学だが、もちろん懸念もある。株価上昇に向けたハードルとは。