「正義の暴走」を防ぐ現実的な方法は?
動きが早くて相談しやすい窓口が必須か

 SNSによる私的制裁を肯定的に捉える、あるいはやむを得ないと考える人は、何もいじめ動画の拡散そのものを歓迎しているわけではない。いじめ動画拡散によってもたらされる即時性・即効性などの数々のメリットを見て、他に頼れる選択肢もないから容認しているわけである。

 言い換えれば、それらメリットを公的機関が持たないからSNSの私的制裁が肯定されている。つまりこの状況はシステムの不甲斐なさ、機能不全のサインでもあるわけである。

 具体的にどのような改善が必要か。タレントのGACKTさんは学校と教育委員会の内部の評価方式に起因する動きのにぶさを訴え、車椅子アイドルの猪狩ともかさんはいじめ加害者を学校が把握したら一律警察に通報する手法などを提案した。

 どちらも現況を変えうる有益な見解であろう。

 今、公的機関に足りずSNSが担っているところを抽出してみて、それが可能な新しい制度・機関・職業が設置されてもいいかもしれない。すなわち下記のような特徴を備えている。

・相談しやすい(窓口が明確で、親や学校と対立する心配や相談後加害者を恐れる心配がない)

・反応や動きが速い

・被害者に代わって動く

・いじめの現場で多く見られる、公的機関がなかなか手出しができない「グレーゾーン」を問答無用に裁く

 並べてみると絵空事なように思えるが、現状のいじめ被害がSNSに救済を求める構造は、こうしたことが実現するなどしない限り変わってはいかないであろう。 しかし上記のような行動が可能な権限が付与された「いじめ解決人」のごとき代理人が学校や教育機関、警察、SNSプラットフォームを横断的に行き来できるようになれば、状況は今と大幅に違うものになる。

 私刑に引かれる感情を全否定するのでなく、その感情に社会が依存しなくて済む仕組みを整えていこうとする想像力こそが、正義の暴走を防ぐ現実的な一歩となるはずである。