エネルギー動乱世界のエネルギーの生命線ホルムズ海峡の幅はわずか50キロ Photo:PIXTA

米国とイランの緊張が高まり、ホルムズ海峡が実際に封鎖され、市場が揺れている。その影響は原油だけにとどまらない。実は日本にとってより神経質なのはLNG(液化天然ガス)だ。三井物産、三菱商事といった商社は中東資源ビジネスに深く関与しており、発電燃料を消費するJERAや東京ガスは価格高騰の直撃を受ける立場にある。しかも、日本の石油備蓄は約250日分確保されている一方、LNGは構造的に長期備蓄が難しく、実質的な余裕はわずかしかない。ホルムズ海峡の緊張は、供給量以上に「価格」と「備え」の弱点を突き、日本企業の資源戦略の脆弱(ぜいじゃく)性をあぶり出し始めている。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、日本のLNGの調達構造と企業戦略の盲点を追った。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

日本を直撃する
「LNGという弱点」

 米国とイランの軍事的緊張が急速に高まり、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡の封鎖に踏み切った。原油市場が注視するこの海峡は、実はLNG(液化天然ガス)市場にとっても“世界最大のチョークポイント”である。

 中東情勢が一気に緊迫する中、世界のエネルギー市場に衝撃が走った。3月3日、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡の封鎖に踏み切ったからだ。

 ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とインド洋とを結ぶ幅約50キロメートルの海上交通路で、世界の原油輸送の約2割、LNGの約2~3割が通過する“エネルギーの大動脈”だ。日本が輸入する原油の約9割もここを通る。

 1980年代のイラン・イラク戦争では、タンカー攻撃や機雷敷設が相次ぎ、封鎖寸前まで緊迫した。しかし米海軍が護衛に入り、最終的に完全閉鎖には至らなかった。そのため専門家の間では「完全封鎖の前例はない」という認識が一般的だった。

 だが、今回は様相が異なる。「ホルムズは閉まらない」という暗黙の前提そのものが崩れたからだ。これまで“ゼロと見なされてきたリスク”が、“確率のあるリスク”として価格に織り込まれ始めた。この構造変化が市場を動かしている。

 日本にとってより神経質なのは原油よりもLNGだ。ホルムズ海峡の影響を直接受けるのは、カタールとUAE(アラブ首長国連邦)からのLNG供給である。日本企業はオマーンLNGなどには出資しているほか、カタールのLNG事業(旧Qatargas)に参画してきた歴史もある。

 2025年実績で見ると、日本のLNG輸入に占める比率は、カタールが約5%、UAEが約1%。両国を合わせても約6%強にとどまる(下図参照)。一方、オマーンは約4.5%だが、同国の液化基地はホルムズ海峡の外側(アラビア海側)に位置しており、海峡封鎖の直接的影響は受けにくい。

 数量だけを見れば、日本のLNG全体が直ちに“致命的”になる構図ではない。では何が日本のエネルギー安全保障にとって問題なのか。個別企業の業績にどのような影響を及ぼすのか。次ページで探っていく。