不祥事が続いている中部電力の浜岡原子力発電所不祥事が続いている中部電力の浜岡原子力発電所 Photo:PIXTA

中部電力が運営する静岡県の浜岡原子力発電所で立て続けに発生した二つの不祥事は、電力業界に激震を走らせた。不祥事の一因は原子力部門の規範意識の欠如とされているが、真の問題は中部電力が抱える構造的な歪みにある。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、不祥事の真因と中部電を待ち受ける今後の苦難を掘り下げる。(ダイヤモンド編集部 鈴木文也)

原子力部門で続いた不祥事
規範意識の低さが原因なのか?

「原子力事業に対する信頼を失墜させ、事業の根幹を揺るがしかねない事案であることを極めて深刻に受け止めています。皆さまに多大なるご心配やご迷惑をお掛けしますことを、心より深くお詫び申し上げます」。2026年1月、中部電力が行った会見で林欣吾社長はこう述べて深々と頭を下げた。

 中部電は25年11月と26年1月に、二つの不祥事を公表した。一つは、浜岡原発で13~19年に実施した約2万3000件の安全性向上対策工事のうち、一部で不適切な処理が行われていた問題だ。本来は、調達部門の決済が必要な仕様変更工事を原子力部門が独断で取引先に依頼し、取締役への報告を怠ったまま20件の工事代金約60億円が未精算となっていた。

 もう一つは、18年ごろに行われた新規制基準適合性審査において、基準地震動のデータを数値が低くなるよう意図的に選定した疑いだ。基準地震動の代表波は、通常、ランダムに作成された20種の波形のうち最も平均値に近いものが選定される。しかし、中部電の原子力部門はあらかじめ代表波となる波形を一つ選定し、その波形が平均値と最も近くなるように19種の波形を後から用意するなどした。実態は、結論ありきの出来レースだったというわけだ。

 林社長は、それぞれの不祥事の原因を「原子力部門のコンプライアンス意識の欠如や工期へのプレッシャー」、「外部の目が届きにくい閉鎖性」などと分析し。会見では「原子力部門の解体的再構築」という言葉を繰り返し、改革を強調した。

 だが、その代償は大きい。取引先への工事代金未精算問題では、伊原一郎副社長兼原子力本部長と名倉孝訓原子力本部原子力部長が引責辞任し、原子力部門のトップらが同時に会社から去ることになった。今回の事態は原子力部門の暴走が引き金となったが、その根本原因はより根深いところにある。

 次ページでは、原子力部門に対する社内評価と中部電を待ち受ける今後の苦難を取り上げる。