ユニクロは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」をパーパスに掲げています。これは単なるキャッチフレーズではありません。柳井さんの魂が込められた存在意義の表明です。

 服という日用品を通じて、人々の生活様式や考え方を変革し、最終的には世界そのものを変えていくという壮大な志を表しています。

多くの日本企業が掲げるパーパスが
社員の心に響かない理由

 柳井さんは「正しさへのこだわり」を重視しており、「企業は社会の公器であり、お客様や社会に自分たちが提供できるもの、提供すべきものは何かを考えてこそ存続を許される」と明言しています。この高い志が、ユニクロの全ての事業活動の根底にあります。

 ここ数年、パーパスの設定が産業界ではブームになっていますが、多くの日本企業が掲げるパーパスは、形式的なものにとどまっています。ブームだからとりあえずつくった印象がぬぐえません。当然、そのようなパーパスは社員の心に響きません。

 それに対して、ユニクロのパーパスは魂が込められた本物の存在意義であり、だからこそ社員の共感を得て、組織全体の原動力となっているのです。

 パーパスは不変のものであり、時代が変わっても変えるべきではありません。ただし、それを社員に浸透させるためには、社内でのコミュニケーションや対話を継続的に行うことが重要です。

 パーパスを単なるスローガンで終わらせないためには、日々の業務の中でその意味を問い直して実践し、血肉化していく必要があります。

 現代はVUCA時代と言われています。こうした不確実で変化の激しい時代においては、過去のデータや経験則に基づく分析だけでは、正しい意思決定ができなくなっています。1年前の常識が通用しなくなるのが現代という時代です。

 BCG(編集部注/ボストン コンサルティング グループ)の後輩でもある山口周氏(編集部注/著作家、経営コンサルタント)は「VUCAの本質は、過去の経験値を無価値化することだ」と指摘しています。

 過去にうまくいった方法が将来も通用するという保証はどこにもありません。過去のデータを徹底的に分析することや、成功パターンを研究すること自体が意味を失いつつあります。