Takramからの学び
経営の文脈でデザインを扱う三つの条件

 こうした「高さ」という視座を、より明確に言語化してくれたのが、Takramの代表である田川欣哉さんだった。

 田川さんは、CDOに求められる視座として、三つのポイントを挙げていた。一つ目が、デザインと経営の両方の言語を語ることができることだ。経営戦略や投資対効果といった経営的な文脈と、製品やサービスの体験価値といったデザインの文脈の双方を理解し、それらを行き来しながら橋渡しできる力を指している。

 二つ目が、組織設計と組織マネジメントの力量である。経営の構造を理解した上で、デザインをどのように適用すれば経営にインパクトを与えられるのかを見極め、そのための具体的なアプローチを設計し、実行していく力のことだ。

 三つ目が、デザインという行為を特別視しないことである。いわゆるデザイン万能論に陥ることなく、デザインによって何ができ、何ができないのかを冷静に見極める姿勢を持つことを意味している。

 いずれもデザインを独立した専門領域として扱うのではなく、経営の文脈の中に位置付け、意思決定に生かしていくための条件といえるだろう。

マネーフォワードからの学び
デザイナーが経営の判断機能を担うために必要なこと

 経営者の立場から見た「高さ」を示してくれたのが、マネーフォワードの代表取締役社長グループCEOである辻庸介さんだ。

 辻さんは、経営者としてCDOに期待している役割について、製品やサービスの最終的な選択は、機能や合理性だけでは決まらないと語る。機能や利便性が同等であれば、ユーザーが最後によりどころとするのは「好きか、嫌いか」という感覚であり、その感情価値を設計できるところにデザインの役割があるという。

 こうした感情価値は、企業の「らしさ」や世界観を形作る要素でもある。その価値がどこから生まれ、どのように事業の力へと転換されていくのか。その道筋を描けるデザインのトップが、経営には必要だと辻さんは考えている。

 また辻さんは、経営者が抱える複雑な課題や思考を整理し、言語化するための「対話の相手」になれることも、デザインのプロフェッショナルが持つ重要な力だと話していた。マネーフォワードでは、そうした対話を通じて、会社が進むべき方向性を明確にしてきたという。

 経営の意思決定を支え、企業の進む方向を定めるプロセスに、デザインの力を関与させることができるかどうか。そこに、経営の文脈でデザインを扱う「高さ」が求められているのだと、私は感じた。