LIXILからの学び
未来の価値を導き出すために否定を引き受ける

 「高さ」という視座が、企業の未来構想にどのように結び付くのか。その具体像を示してくれたのが、LIXILの代表取締役社長兼CEOである瀬戸欣哉さんだ。

 瀬戸さんは、企業には目指すべきノーススター(北極星)があり、そこへ向かうために何を選び、何を手放すのかを判断する上で、デザインが重要な役割を果たすと語っていた。現在の価値を磨くことだけでなく、時にはそれを否定し、その先にある未来の価値を構想する。その思考プロセスを支える方法論として、デザインが用いられているという。

 その象徴的な例が、布製折り畳み浴槽「bathtope(バストープ)」である。これは、従来の浴室や浴槽の在り方そのものを問い直し、生活価値と環境負荷の両面から再定義した製品だ。自社にとって重要なプロダクト領域をあえて否定する判断の背景には、デザイン的視点による徹底した問い直しがあった。

 デザインの力によってノーススターへ向かう道筋を描き、必要であれば否定を引き受けながら未来を構想する。その判断にデザインを関与させられるかどうかが、CDOに求められる「高さ」なのだと、私は理解した。

ヤマハ発動機からの学び
組織の創造性を経営計画に接続する

 デザインを経営の意思決定に生かす「高さ」を、組織設計の観点から示してくれたのが、ヤマハ発動機の執行役員・クリエイティブ本部長(当時)を務める木下拓也さんだ。

 ヤマハ発動機では、コーポレートブランディング、製品デザイン、イノベーションデザインを担うクリエイティブ本部を軸に、ブランド価値とイノベーションを同時に生み出そうとしている。その考え方は、デザインを経営資源として捉える「デザイン経営」の思想とも重なる。

 特徴的なのは、その実現の道筋を、専門部門の強化ではなく「全社の創造性の向上」に置いている点である。社員一人一人の主体的な問題意識や「こうしたい」という思いを引き出し、それを組織全体の力として束ねていく。そのための組織として、クリエイティブ本部が機能している。

 さらに、こうした取り組みは理念にとどまらず、中期経営計画に明確に位置付けられている。創造性の向上を、ブランド価値や事業競争力と直結する経営テーマとして扱っている点に、デザインを経営の文脈で使う「高さ」が表れている。