「ネット投票」を実現した
欧州のIT立国とは

 北欧フィンランドやスウェーデンとバルト海を挟んだ向かいに位置するエストニアは、2005年に世界で初めて全国規模のネット投票を導入しました。23年の議会選挙では、投票者の51.1%がネット投票を選択し、31万票以上が有効票としてカウントされています(無効票はわずか1票のみ)。

 ネット投票のメリットは、「どこからでも24時間投票が可能」「モバイルIDによる投票が可能」「期間中であれば何度でも投票が可能」の3点に集約されます。投票は1分もかからず完了するそうです。また、会場でアナログ集計するのに比べて手間暇が圧倒的に短縮されることは言うまでもありません。

 一方、デメリットもあります。投票を誰かに覗き見される可能性があることや、投票所というオープンな場所ではないため誰かに監視されながら投票せざるを得ないシーンも想定されます。また、大規模なサイバー攻撃などの可能性も排除できません。

 要するに最大の懸念は、「ネット投票は改ざんされるのでは」という点です。この問題に対してエストニアはどのように解決を図り、ネット投票を「当たり前」にしているのでしょうか?

 ネット投票の改ざん問題に対してエストニアは、郵便投票で使われてきた「二重封筒方式」をデジタル化することで解決しました。郵便投票では、匿名の内側の封筒に票を入れて封をし、さらに投票者の名前と署名を記入した外側の封筒に入れます。

 これをデジタル技術で再現すると、投票内容は暗号化され(内側の封筒に相当)、投票者のデジタル署名が付与されます(外側の封筒に相当)。復号には複数の鍵保有者の協力が必要で、単独での改ざんは不可能です。投票者は投票後15分以内にスマホで自分の投票が正しく届いたかを確認します。また、選挙結果は数学的に検証可能です。

 誰かに監視されて投票するリスクに対しては、再投票OKにすることで解決しました。ネット投票は期間中の最後の投票のみが有効となります。さらに、投票所での紙投票も可能で、その場合は紙の投票が優先されます。仮に誰かに強要されて投票させられても、後から自分の意思で投票し直せばよいのです。

 エストニアでは成功しているネット投票。今後、他の国にも広まるのでしょうか?