まずは経済的理由。バブル経済破綻後に就職した団塊ジュニアや就職氷河期世代であるがゆえに、雇用が不安定で経済的な見通しが立たず、結婚して子どもを(ましてや複数)産み育てる自信のある男女が少なかった。共働きであるにしても、女性が出産適齢期に仕事を続けながら結婚・出産できるような社会の価値観が共有されておらず、企業にも女性の出産子育てを支える制度が整っていなかった。

 団塊ジュニア世代より上では、女性の専業主婦率が高いのが日本社会の常だった。女性が会社勤めをするのは「腰掛け」、短大や大学を卒業して数年間働き、結婚のタイミングで「寿退社」をする。結婚したら家庭に入り、子どもを産み育てるのが当たり前であり、25歳を過ぎても企業で働き続ける女性は「お局」と呼ばれる珍しい存在だったのだ。

 それが、結婚しないで働き続ける、または、結婚・出産しても会社を辞めずに働き続ける団塊ジュニア&氷河期世代の女性たちが徐々に増えていったことで、企業の、そして社会の景色が変わっていった。

「M字カーブ」解消の裏にあった犠牲

 当時、女性の就業率を年齢別に折線グラフにしたときに、結婚出産期にあたる20代後半から30代にかけて女性の就業率が著しく低減する現象、いわゆる「M字カーブ」が問題となっていた。先進国の中では日本と韓国のみ特徴的にM字の底が低く、その曲線を大きく描く傾向にあった。

 曲線は結婚出産年齢で下降した後、子育てから手が離れた頃にパート復帰などで少し上昇する。良い悪いではなく、それが一般的とされる価値観だった。しかし景気が悪い時代に社会人となった団塊ジュニアや氷河期世代は採用抑制を受けて非正規労働者が多く、正社員も給料が上がらず、男性であろうと女性であろうと仕事を継続する必要があった。M字カーブの底が上がっていったのだ。

 しかし、自分たちが20代から30代の出産適齢期であった頃に、女性が働きながら無理なく子どもを持てる社会設計ではなかった、とは、比較的ハイキャリアのロスジェネ世代女性が直面し続けた現実だ。つまり、2000年代から2010年代にかけてのM字カーブの解消は、当時のロスジェネ女性が結婚も出産もせずに働き続けたことによって実現された部分があるということである。