なぜ不良債権が
処理できないか

 これは中国共産党の代表である中央政府(習指導部)であるから困難なのであって、地方政府なら可能ではないのかという意見もあろう。

 だが、融資平台は、単なる企業ではない。インフラ投資、雇用維持、GDP目標達成という政治任務を担っており、その経済活動は「行政の延長」である。

 仮に融資平台を破綻させれば、「地方財政の崩壊」「地方の失業の加速度的急増」「社会不安の拡大」などが一気に顕在化することになる。もはや地方自治を持続させることすら不可能になりかねない。

 そのため中国政府が行っているのは、「借り換え」「返済期限の延長」「国営銀行への付け替え」などの小手先の政策ばかりだ。単に問題を先送りしているに過ぎない。

打てる手段は
「国営銀行への集約」

 中国政府ができる地方の不良債権を処理する方法は、実質的に国営銀行に集約させることのみである。地方債務を国営銀行に移せれば、短期的には金融危機を防げるはずだ。

 ただし、中長期的には大きな副作用を伴う。

 国営銀行は、不良債権を抱え込むことで、自己資本が劣化してリスクを取れなくなってしまう。すると、融資余力が低下して、リスクを伴う新規投資ができなくなる。

 その結果、中国経済は「成長のための投資」が大きく縮小して、「既存債務を延命するための融資」、いわゆる破綻先融資しかできなくなる。

 これは、1990年代後半の日本よりもはるかに深刻だ。日本は最終的に銀行再編と不良債権処理を断行したが、中国には出口戦略が存在しないのである。

米国債から金に
乗り換えた理由

 中国が外貨準備として米国債保有を急速に減らして、ゴールドを積み増していることも、この構造と無関係ではない。

 地方債務を国営銀行に集約すれば、いずれ中央政府が銀行を支える必要が出てくる。その過程で、財政赤字が増大して、人民元供給の増加や通貨信認への圧力が生じる。

 ゴールド保有は、他国への負債行為ではない。ドルのようにアメリカ政府によって資金の流れを把握されたり、経済制裁として凍結されたりすることはなく、外交カードに用いられることがない。

 つまり、中国政府は、不良債権処理に伴って手元資金がショートした状態でアメリカ政府から圧力をかけられることをおそれて、米国債からゴールドに乗り換えているのだと考えられる。

 トランプ政権が当初の対決姿勢を緩めて一部で中国との協調もはかっているのは、中国がすでに深刻なレベルまで追いつめられており、選択肢を失っていることと無関係ではないだろう。